【オンラインサロンピッチ2021春 優勝者】「恥ずかしい」なんて思っているヒマはない――家業、地元、そしてU34、いろんなフィールドで挑戦を続けたい

秋田県
有限会社武藤工芸鋳物
専務取締役
武藤 元貴さん
http://www.muto-cm.ftw.jp/

明治中期創業、昭和59年設立の秋田県鋳物屋アトツギ(6代目候補)の武藤さん。
完全受注生産で銘板、銅像、校章、モニュメント、焼印、表札など様々な鋳物に取り組む。
また、2年前に楽天ショップを構え、点字焼印など、オリジナル焼印にも取り組んでいる。
また、2021年4月にアトツギU34内で行われた「オンラインサロンピッチ春」(ピッチコンテスト)で優勝。
日々積極的に行動をしている武藤さんの原点に迫る。

修行、実践……積み重ねがその先を拓いた

 

ピエール
ピエール
早速ですが、家業に戻ることになったいきさつからお聞かせください

子どもの頃から「この仕事カッコいい、継ぎたい」っていう気持ちはあったけど、世の中の景気とか業界の衰退もあって、親父には「自分の道を探しなさい」と言われました。だから、バイオエタノール研究に始まっていろいろと目指したのですが、最終的に東京でフリーターをしていたところに、いくつかのチャンスが重なって家業に入れることになったんです。家業はやりたかったし、地元の秋田に貢献したいっていう思いもあったし、本当にラッキーでした。
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
なるほど。地元を良くしたいという考えはずっとあったんですか。

そうですね、地元の祭りの影響すごく大きいです。小さい頃からずっと関わってて、学んだことがたくさんあります。ものすごい縦社会の中で、気を利かせて率先して動くことが必要で、高校生の頃には祭りの段取りを全部覚えていましたよ。おかげで東京の大学に行ってからも、仲間内でのイベントがあると国内外かかわらず「手伝って」と声がかかって。ますます勉強になったし、すごく世界が広がりました。
武藤さん
武藤さん

(東北三大祭りの一つ「秋田竿燈祭り」に幼少期から親子代々参加している。これは竿燈の前で3兄弟で撮った一枚)

ピエール
ピエール
新しいことに物怖じしない姿勢は、お祭りの経験からきているんですね。家業に入られてからは、師匠であるお父様を通して技術を学ばれたんですか?

 

はい。あとは、祖父の代からの職人さんですね。
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
その時、皆さんは武藤さんを跡継ぎとして認められていたんでしょうか。

風当たりが強かったわけじゃないけど、自分の作業や完成品を通して「それでいいのか」といつも問われている感じがしました。自分はそんなに器用じゃなかったので、モノになるまでに時間はかかりましたよ。でも、積み重ねていけばなんとかなる、とわかりました。「不器用でも職人になれた」っていうモデルケースを目指して、日々修行していま
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
自分が納得するレベルになるまでに、どれくらいかかりましたか?

今でも納得というレベルじゃないけど、認められてきたのは3年ぐらいからですね。
武藤さん
武藤さん

ピエール
ピエール
長いですよね、心が折れそうになる(笑)。

でも、スキルを身に付けていく過程って、そんなに嫌じゃないんです。一つできるようになると自分で作れる製品の幅も広がっていくので。今、どんどん楽しくなっていますよ。
武藤さん
武藤さん

ピエール
ピエール
なるほど。ところで、武藤さんは現在、SNSや楽天ショップでの出店でどんどん発信されていますよね。実際どんな手応えですか。

 

一番感じているのは、発信することも自分たちの大事な仕事の一つ、ということです。「鋳物屋ではこういうものを作ってますよ」って。「鋳物屋」、今ほとんどの人は言葉も知らないですよね。地元でも知名度が下がってきているので、常に危機感があります。
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
だから武藤さんご自身、いろいろな切り口をお持ちなんですね。アトツギU34も、お祭りや地域の活性化も、一つの発信になりますもんね。

アトツギU34はこちら

アトツギU34で自分を知ってくれた人は、そこから秋田やお祭りも知ってくれて、秋田の人たちはU34を知ってくれればいいですね。他の切り口から鋳物のことも知ってもらいたいので、自分がハブ(ビジネスの領域において何かの活動の中心もしくは主要な部分を意味する)のような存在であればいいのかな、と思っています。
武藤さん
武藤さん

(竿燈を腰にのせて演技する武藤さん(写真中央手前))

ピエール
ピエール
名言ですね!

社長は、「楽天で売る」のではなく「楽天で広告する」という観点をもっています。お客さまに商品を発送するときには、親父と一緒に「ウチはこんなこともやってます」って、手紙を入れています。けっこう連絡が来るものなんですよ。実際、楽天に出店して本当にありがたかったのは、『武藤工芸』でググったときに上位に出てくるようになった、ってことなんです。
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
ところで、お父様とお話しされることが多いんですね。

そうですね。喧嘩しないようにお互い気を遣ってますし、逆に親父の方もあまり制約しないように気を遣ってくれてるんだな、って感じます。「職人が平日の日中に手を動かさないとモノはできない、製造業の職人が日中に外を出歩くなんて」という文化がありますが、U34の活動が社外での活動の成果につながることで、日中に工場を離れることを少し納得してもらえています。親父は、自分の知らない世界を子どもが知っていることがすごくうれしいみたいです。
武藤さん
武藤さん

ピエール
ピエール
そうなんですか!お父様はご理解があるんですね。自らが学ぶ姿勢がある方なんでしょうね。いい環境、いい社風です(笑)。

親父は自分の技術に凝り固まるタイプじゃなくて、どんどん新しい技術を求めるタイプの職人だから、ありがたいです。

武藤さん
武藤さん

ピエール
ピエール
新しいことに挑戦する時って、何から始めたらいいんでしょうか?

何かに挑戦するのは、性格もあると思います。自分は、ひらめいたらまずやりたいっていうタイプで。ただ、すぐには行動せず、すべてが「ヨシ!」だったら進む感じです。
武藤さん
武藤さん

 

(銘板の原型を製作する様子原型から砂型をとり、砂型に溶けた金属を流し込むことで鋳物製品ができる)

ピエール
ピエール
踏み出していくときって、どんなマインドですか?アトツギの方って、「失敗できない」ってマインドは強いと思うんですよ。

 

自分の場合は「恥はかき捨て」。このグループ内だったらどれだけ恥をかいてもいい、って思ってやっています。あと、アトツギだからこそ、会社に赤字とか損失を出さない限りは失敗も笑ってごまかせる、ってすごく思うんですよね。「ウチの跡継ぎがちょっと失敗しましてね」って社長が笑って済めば、それでいいんじゃないですか。
武藤さん
武藤さん

ピエール
ピエール
確かに承継段階の前なら、対外的にはまだまだ笑って済ませられるレベルですもんね。対内的にはめちゃくちゃ怒られるかもしれないけど(笑)。

まさに、AVS(アトツギベンチャーサミット)で言われていた「トライ・トライ・トライ」です。「トライ・アンド・エラー」でエラーを待ってる暇がないので、「エラーが出たらそれを改善すればいい」って考えて進んできました。恥ずかしいって思う暇もなかったです。
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
今の、いい言葉です! では、現在の武藤さんの目標などを教えてください。

これからもチャレンジを続けていきたいです。それと、自分も会社もチャレンジする人を助けられる存在でありたいと思います。例えば、オリジナル製品や道具を作りたいといった要望に鋳物の業で応えていきたいです。そしてゆくゆくは芸術家を目指す人たちに、彼らの修行と生活のベースとなる、ものづくりでお金を得られる場を提供したいと思っています!
武藤さん
武藤さん

 

ピエール
ピエール
御社で働きながら、自分のアーティスト活動もできる場ですね。また、武藤さんを中心にネットワーク拡がっていきますね(笑) 武藤さん本日はありがとうございました!これからも圧倒歴な行動力で突き進んでください!

 

アトツギU34はこちら

■取材した人

ピエール

某大手銀行に就職。その経験を活かし、アトツギベンチャーと金融機関の、次世代のあり方を世に問うべく、メディアに取り上げられるような案件をアトツギと実現することが目標。

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