人も企業も、いつからでも、どこからでも、必ず変われる!

株式会社高山
代表取締役 
高山 智壮さん

中央大学経済学部卒業後、都内大手銀行にて法人営業・インターネットバンキングのマーケティングに従事。3.11地元家業が津波で被災を体験し、事業承継を決断。その後、プラスJTX東京支社にキャリアチェンジし、グロービス経営大学院MBA取得。2014年に家業の株式会社高山に入社し、サイバーセキュリティ事業を起ち上げる。宮城県サイバーセキュリティ講演活動の全国初の民間委託事業者となり、100講演以上の実績有。コロナのピンチをチャンスに文具店からDXカンパニーへ事業転換。2022年4月DX認定企業となる。

3.11を通じて、自分の使命に目覚める

 

トニー
トニー
まず簡単に家業とご自身の経歴をご紹介いただけますか。
家業は文具屋・事務機屋で、パソコン販売と、ネットワーク回線やサイバーセキュリティのサービス提供もしています。学生時代は、家業に対して継ぐことより、高校・大学とレスリングで強くなって勝ちたいと、自分が燃えることに取組んでいました。大学3年時に選手生命が絶たれるほどのけがをしてしまい、その時に「それまでスポーツへ向けていた情熱を、仕事を通じて成長し社会に貢献したい」という思いが芽生えたんです。卒業後は大手銀行に入行しました。中小・中堅企業を下支えしていく仕事をしたかったのですが、理想と現実のギャップに苦しみ、法人営業のプレッシャーでうつ病にもなってしまって。そんなときに3.11が起こりました。地元が津波に飲み込まれるところを東京でテレビを通して見ていることしかできず、「自分はこのままでいいのか」と思いました。それが「家業を引継ぎ、事業を通じ東北に貢献していく」と思い始めた転換点でした。
高山さん
高山さん
トニー
トニー
社会に貢献したいという思いが、「家業を引継ぎ、事業を通じ東北に貢献していく」という形で湧いてきたんですね。
実際にはいろいろな感情がありましたね。一番大きな感情は無力感でした。ボランティアとして泥かきをしていたんですけれど、それしかできなくて。それと、もっとコアの部分に、創業者でもある祖父の生前のビデオを見せてもらったときに感じた思いがあります。祖父は私が生まれて1年後ぐらいに亡くなるのですが、亡くなる直前に撮影された映像の中で、私を抱きかかえた祖父が「必ず智壮にこの会社を引き継げ」と言っているんです。それを見て、「自分が生きていく道はここだ」と稲妻が走りました。「自分自身の働く目的」と、「家業を引継ぎ、事業を通じ東北に貢献していく」という思いが重なった瞬間でもありました。その時は経営が分かっていたわけでもないし、今戻っても足手まといだろうと、MBAに挑戦し、2014年の卒業と同時に家業に戻りました。
高山さん
高山さん

 

誰の為に、何の為に働くのか。この目的の大切さを、痛みの経験から学んだ

トニー
トニー
戻ると決められたとき、ご家族や従業員の方の反応はいかがでしたか。
うちの家族は昔から神棚や仏壇に向かって「智壮が継いでくれますように」と手を合わせていて、母や祖母には「祈りが通じた」と言われました。実際、僕も何かインスピレーションを感じて導かれるような感覚で家業に入ったと思います。社員の方からの反応はいろいろでした。大手銀行出身ということもあって、塩釜の皆さんから見ると「ちょっと異世界のやつが来る」みたいな感覚はあったと思います。
高山さん
高山さん
トニー
トニー
高山さんご自身は、戻った当初どのようなことを感じましたか。
3.11後会社の経営が非常に苦しい状況でしたので「なんとしてもこの会社を変革して守っていかなければならない」という危機感と覚悟で戻り仕事をしました。正直現場の2,3名の社員以外はどちらかといと様子見だったり冷めた目で見ていたと思います。「会社の為に改革が必要なんだ」と伝えても、伝わらない。そんなもどかしさを感じながら、心から共感してくれない社員の方をどこかで否定・批判していたのではないかと、今振り返ると思います。
高山さん
高山さん
トニー
トニー
アトツギあるあるじゃないですか。じゃあ、その状況からどんなふうに家業を変えていかれたんですか。
これは皆さんにぜひお伝えしたいことなのですが、組織のカルチャーって、リーダーになる人の在り方で変わると思います。事業承継ってないものづくしです。人も、お金も、チャンスもない。でも、ないものにフォーカスを当てるほど苦しくなるだけです。リーダーである自分が良いほうに変わらない限りは、周りも良くならない。戻った当初は、そもそも業界がレッドオーシャン市場になっていて、収益性がかなり苦しい状況でした。会社を立て直すために、高付加価値事業を創り上げることが最優先だと考えました。
高山さん
高山さん
トニー
トニー
難しい問題だと思うのですが、どのようなアプローチをされたのでしょうか。。
銀行時代のノウハウ、グロービス経営大学院での学び、(株)高山の強み、時流をかけあわせていきました。その結果「デジタルでの企業支援」が大切ではないかと思いました。そんな中、サイバーセキュリティのプロのコンサルタントと出会い、サイバーセキュリティの重要性とビジネスチャンスを感じました。みんなを巻き込んで、事業としては1,2年で収益性を確保できるようになりました。創業70年を機に、3.11で傷んだ、社屋を大規模改修のプロジェクト起ち上げ、オフィス変革と企業変革に挑戦しました。その時に父(当時社長)と現場メンバーとの意見の違いをまとめきれず、離職される方もいたし、社内には大問題が山積みになっていきました。なんとかリニューアルオープンは出来たものの、私は体を壊して入院しました。ところが、社員は誰も見舞いに来なかったです。この会社を守るために大きな責任を背負って必死に働いてきたのに、何のために、誰のために働いているのかが分からなくなりました。この経験が僕にパラダイムシフトを起こしたと思います。
高山さん
高山さん

 

 

トニー
トニー
そこから考え方や従業員さんへの接し方が変わっていったんですね。
そうですね。「何のためにこの会社はあるのか」「何の為に働くのか」を問い続け、考え続ける中で「人は幸せになる為に働くんだ」「私も、みんなも幸せになりたい」「私達TAKAYAMAの仕事は時代と共に商品が変われど、傍をラクにしてきた仕事。では一緒」つまり私達が追求していきたい事、それが「働くを幸せに」なる為に、TAKAYAMAは存在し、私もそれを実現するために経営をしていきたい。と会社と自分自身の理念・価値観が明確になりそして統合していきました。 それを経営12ヶ条という会社の指針として言語化し、「働くを幸せに」が社内共有していく中で、組織の風土が少しずつ変わっていきました。
高山さん
高山さん

 

高山さんがメンターを務めるアトツギU34はこちら

 

文具店から「DXで、共に働くを幸せに」するTAKAYAMAへ

 

トニー
トニー
高山さんはもともと銀行員で、それ以前は体育会系の方ですよね。新規事業に取り組むときに、どうやって自分と畑違いのところを進めていかれたんですか。

私は、ゼロから何かを作ることはできませんが、まずはよくなりたいと願い、どうやったら「お客様満足、社員幸福、会社繁栄を通じ社会貢献を実現出来るか」を考え続けています。新規事業や企画を考える視点としては ①時流×②会社の強み×③自分の強み×④対象のマーケット・お客様が本質的に満たされていない点・課題などに注目します。その課題・イシューにおいて日本トップクラスの成功事例・成功企業の情報収集をします。そして直接その方から学ばせてもらったり、コンサルティングや支援を受けたりします。
高山さん
高山さん

トニー
トニー
かなり学習、研究をされたんですね。

そこからノウハウを得ながら自社で徹底した実行・実践・PDCAを繰り返して行きます。また、「ピンチはチャンス」が私達の合言葉です。家業に戻ってから何度も「ピンチ」がありました。そのたびに「この問題を通じて、私達は次なる成長・進化が出来る」と社内で問題を共有し、智恵を出し合い、改善策を共に考え、実行し、解決してきました。その中でも一番大きかったピンチが、コロナショックです。コロナが来たタイミングで文具店の業績悪化と古参メンバーの離職が重なりました。そんな中で私達はテレワーク、オンラインセミナー・オンライン商談にいち早く挑戦しました。さらにクラウド化、ペーパレス化、デジタルマーケティング、働き方改革・オフィスの抜本的改革をしてきました。自社で実践してきたことで知恵・ノウハウが蓄積され、人時生産性を前年対比で123%成長させることができました。この実績と、ノウハウを、コアメンバーでマーケティングや商品開発を学習し、独自の商品・サービスを開発に挑戦します。「DXとはなにかを体験できる DX体験ツアー」や「採用・集客力アップ支援のWebセンニン」「ノンプログラミングで自社の情報基盤を構築するDX導入支援」等を1年前後でリリースする事が出来ました。そしてなによりも、ご縁と絆を大切にしてきました。サイバーセキュリティ事業もDX事業も点から点、線から線の繋がりの連鎖から拡張し面へと発展してきました。
高山さん
高山さん

トニー
トニー
ベンチャー型事業承継って、自分の経験と家業を組み合わせる方は多いんですが、高山さんの組み合わせ方はもう一段レベルが高いと思いました。ご自身と、引っ張ってきた人と、家業との組み合わせで輪をどんどん大きくされている感じですよね。では最後に、高山さんの今後の目標やビジョンについて教えてください。
DXカンパニーとして今後さらに商品やサービスをリリースしていきますが、中小・中堅企業のお客さまに、本質的に役立つものをしっかり作り、提供していきたいです。
もう一つ、経済的な成長のためだけでなく、人間が地球と生きていくためにデジタルをうまく活用するということを、SDGsの思想も含めて考えていきたいです。突き詰めれば、「もっと人が人らしく働ける幸せな社会を実現していきたい」というところに行き着きます。僕自身、「幸せだ!」と感じながら働きたいですし、一緒に働くメンバーにも、お客さまにも「働く幸せ」を実感して欲しいと思っています。
「DXで、共に働くを幸せに」というのが私たちの一番の想いです。
高山さん
高山さん

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■取材した人

トニー

某大手証券会社に勤務。事業承継に関する税金や自社株式についての知識はオタクレベル。座右の銘は「死ぬほど頑張れ!絶対死なないから!」。

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