マスオ型アトツギだから実現できることと、やっぱり難しいこと
\マスオ型アトツギ日本代表/
株式会社大都 代表取締役
山田岳人 氏
工具卸問屋の一人娘と結婚する際、家業を継ぐことを結婚の条件に出され、突如アトツギとなる。ただ工具を売るのではなく、工具が必要となる文化をつくることを掲げ、DIY文化を日本に根付かせる事業を展開中。アトツギ界の中でも、『マスオ型事業承継』のロールモデルとしての矜持があり、磯野家(サザエさん)の家系事情にやたら詳しい。今回は、アトツギ娘と結婚した”マスオ”ポジションとして、アトツギ娘の悩みをぶった切る!
\孤高のマスオ型アトツギ/
有限会社ゑびや/株式会社EBILAB 代表取締役社長
小田島春樹 氏
1985年北海道生まれ、10代のころから輸入業やECビジネスを手掛ける根っからの商売人。
ソフトバンク株式会社で人事や新規事業・営業企画を経験した後、妻の実家が営む和食堂「有限会社ゑびや」に入社。データやAIを活用した経営で売上高5倍を達成し、そのノウハウやシステムを提供する「株式会社EBILAB」の代表取締役社長も務め、日本のサービス業のDXを推進している。TBSテレビ「がっちりマンデー」をはじめ各種メディアに取材されて順風満帆・・・というのは表の姿。DXに反対する義父と繰り広げたバトルなど、今回は裏側の出来事も含め包み隠さず公開。
\愛深きマスオ型アトツギ/
ウメモト株式会社 梅本隆太 氏
元創業80年の医療機器メーカーアトツギ(長男)。自身の家業であった医療機器メーカーで事業承継準備をしていた中、現在の妻に結婚の条件で「婿」になることを提示され受諾した。妻の家業であるシール印刷業のアトツギに転身後、社内での行動に制限がかかり、妻と相談し社外でシール印刷に関わる新規事業を立上げた。事業承継は道半ばですが、婿とは切っても話せない家庭での話。子供が生まれてからの環境の変化。最近は「最後は愛」と実感する日々を送るアトツギ。
妻の実家の家業を継いだアトツギ経営者をゲストに迎えたイベント「マスオさんに聞く アトツギ娘との恋愛・結婚・出産に関する裏話」がエヌエヌ生命との共催で2021年6月24日にオンラインにて開催された。株式会社大都の山田岳人代表取締役、有限会社ゑびや/株式会社EBILABの小田島春樹代表取締役社長、ウメモト株式会社の梅本隆太氏をゲストに迎えた座談会の内容をまとめた。
三者三様の、マスオ型アトツギの経歴
大都はもともとは問屋業でしたが、現在は問屋業は辞めて「DIY FACTORY」というDIY専門の提案型ECサイトを運営しています。僕が3代目で義父が先代です。
私自身は長男で妹が1人いて、父親はサラリーマンという家系です。妻との間には娘が2人いて、長女が大学4年生、次女が高校3年生。今のところ継がせる気は無いですが、今日のメンバーの中では「継がせる側」に最も近い立場です。
僕も「娘が一人っ子なので、もしよければ継いでほしい」とは言われていましたが、昔ながらの土産物店や街の食堂みたいな場所を運営していたこともあって、僕も妻も当初継ぐことはまったく考えてなくて。
ただ、「廃業して、今後テナントにする」という話が出たので、手伝ってもいいかと思って参画しました。結局テナント業への移行はうまくいかず、店舗運営を続けながらいろんな改革をしています。
僕も妻も、結構自由な人間で。コロナで今は帰ってきたものの、一時期は会社の代表になったにもかかわらず、家族で沖縄へ移住したこともあります。妻は、今は会社に入って若女将みたいになってます。僕自身の兄弟構成は山田さんと同じく妹が1人で、父は公務員。今は妻との間に子どもが2人いて、上が女の子、下が男の子です。
自由で正直な人間なこともあり、家業に入ってからはバトルを繰り広げてきました。僕は自分のことを「反逆のマスオ」と言っていて。ファイティングポーズをとって義理の親と戦う人間でした。
ウメモトは創業58年、大阪に本社がある印刷会社で、食品のシールや消火器のシール、自動車部品の保護フィルムなどを作ってます。最近では、妻と一緒にチャット対応型のシール印刷サービスを、ウメモトとは別で立ち上げました。
僕が婿になろうと思った決め手は、両家初めての顔合わせで義父から言われた「息子さんをください」の一言です。従業員が40名ほどいて、従業員の家族を含めると100~150人を守り続けなければならない。だから「息子さんをください」と言ってくれたみたいで、その熱い言葉が嬉しかったんです。
実は、僕の父親も創業80年の医療機器メーカーの経営者で、家業がある中で育ちました。僕で4代目になるはずだったものの、途中で結婚したいと思う妻が出てきて、結婚の条件がウメモトに入るということだったので婿を選びました。
「経営ができるチャンスだと思って」家業に入ることを選んだ?
ちなみに、義父とは学生時代から一緒にゴルフに行く仲で、親しくはなっていました。だから、うちの奥さんは僕をアトツギとして狙ってたと思います。
そんな中、妻の実家が既存事業を縮小してテナント業に転換しようとしていて、面白そうだなと思ったんです。僕、もともと海外に行きたくて、海外に住むためには毎月貰えるお金があるといいなと思ってたので、テナント業だったらありだなと。そういった、打算的な考えもあって参画したんです。結局、当初のプランからは少しズレてしまいましたが。
奥さん(アトツギ娘)は家業に入るべきか否か
それで結婚の話になったとき、「この給料じゃ結婚できないから、ベンチャーに戻るか、ウメモトに入るか選んで」って言われて。最初、「ベンチャーに戻ります」って言ったら、義父に「うちに来い」と口説かれて。嫁さんも、「うちに入らないなら、結婚しなくていいかな」って言い出したので(笑)。
小田島さんは、後を継ぐことが結婚の条件に入ってたわけではないよね?
家業に入る気が無かったから東京でマンションも契約したんですけど、「体調が悪くなった」という話から始まり、「事業を縮小する」といったことを伝えられて。捨て身の攻撃に遭って入りました(笑)。
うちはサービス業なのもあって、社員がほとんど女性で。女性に気持ちよく働いてもらうためには、ある種ホストのようにというか、男性として優しく接して女性を盛り上げることも必要なんですよ。
そんな僕を見て、家業に入る前は奥さんも「若い子たちと仲良くやっているのが気に食わない」みたいな気持ちも多少あったと思うんですけど、実際に家業に入ったらその必要性も理解してくれたみたいだし、僕が読み取れない女性の気持ちも汲んでくれるので、一緒に働いてよかったと思うことの方が多いですね。
「家業をしたいの?事業をしたいの?」
社長と自分の関係性こそ大事だなと考えを変えることができました。
あと、うちの場合、奥さんがまったく会社にタッチしていないことがよかったのかもしれません。古参の社員さんに辞めていただく場面もあって。昔は会社の2階が自宅だったので、その方は奥さんが小さい頃から知ってる方なんですよね。奥さんが家業に入ってたら、そういった決断がしづらかったのかもしれません。
背景はさまざまでも、マスオ型アトツギには「覚悟」がある
でも、皆さんの話を聞いていると、飛び込んだ後に考えてもいいんじゃないかと思えました。それに小田島さんの言う通り、「家業ではなく、事業をするために入るんだ」という意識があるなら、変にバイアスをかける必要は無いのかもしれませんね。
貴重なお話をありがとうございました。
“中小企業サポーター”エヌエヌ生命「次世代への支援」
エヌエヌ生命は、新しい企業経営に挑み、日本の中小企業の未来を支えていく、後継者や若手経営者を支援します。 イノベーションにつながる学びのきっかけと人とのつながりを築く機会を提供します。
■取材した人
ティム\マスオ型アトツギ絶賛準備中/
コテコテの理系男子の元ITエンジニアから結婚を機に土建屋アトツギへ華麗なる転身。この選択は正解だったのか...俺たちの戦いはこれからだ!!!