【アトツギ甲子園舞台裏】ファイナリストを支えた方々の想いとは

中小企業庁は、3月12日(土)に「第2回アトツギ甲子園」を開催致した。ファイナルでは、全国の中小企業の承継予定者(アトツギ)総勢138名の中から選ばれた15名のファイナリストによりプレゼンテーションが行われ、審査委員による審査の結果、「文具の力で 日本の地方を変える」の福井県「株式会社ホリタ(ホリタ文具)」堀田 敏史氏が最優秀賞に輝いた。

家業を背負い、家業の未来を熱く語った15人のファイナリスト。彼らは決して一人でこの舞台に立った訳ではない。
本記事ではそんな彼らを支えた支援機関の方を3名を紹介する。

①佐賀県事業承継・引継ぎ支援センター 承継コーディネーター江越 剛氏
②豊後大野市商工会 髙屋 亮平氏
③公益財団法人ふくい産業支援センター 岡田 留理氏

 

①佐賀のロールモデルとなるアトツギを生み出す!
《佐賀県事業承継・引継ぎ支援センター 承継コーディネーター江越 剛氏》

 佐賀県事業承継・引継ぎ支援センターで承継コーディネーターをしています。事業承継診断を受け、事業承継の道筋をつけるために経営者の方々と一緒になって取り組んでいます。佐賀県は、よろず支援拠点や佐賀県産業イノベーションセンターを中心に、企業価値を養成する機運が高まっています。その中の一つの取り組みとして後継者経営塾があり、運営に携わっておりました。

 

アトツギ甲子園は第一回大会を知っていたため、本大会についても知っておりました。そこで事業意欲の高い後継者が多くいる、後継者経営塾のメンバーに声を掛け、金子さんがエントリーをしてくれました。ファイナリストになったと聞き、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点の方と壁打ちのために金子さんの会社にも伺いました。金子さんのような方の挑戦を多く知ってもらいたいので佐賀新聞にもアトツギ甲子園のことを紹介しました。

 

佐賀県内では、高齢でも事業承継をしない社長が多くいらっしゃいます。地域経済を盛り上げるために後継者が失敗してもいい環境を作り、早くに若手に引き継ぐ雰囲気を作っていくことが私の仕事だと思っています。金子さんのような、ロールモデルとなるアトツギを何人も輩出し、もっと若い世代がアトツギに憧れて承継が進んでいけばいいなと思います。

 

■後日、金子さんに江越さんの支援についてヒアリングを実施。

「去年の夏に後継者経営塾に飛び込んで本当に良かったと思います。後継者経営塾があったからこそ挑戦できたことだと思います。二次審査に通過した後、苦手分野である資料の作成に対してアドバイスを下さったり、新規事業アイデアの壁打ちに付き合って下さったりと、本当にありがたかったです。センター総出で取り組んでくれました。」と話している。

《プロフィール・経歴》
佐賀県事業承継・引継ぎ支援センター 承継コーディネーター江越 剛氏

https://www.saga-koukeisha.jp/

1984年 地方銀行へ入行。2019年より佐賀県事業承継ネットワーク事務局承継コーディネーター
(現:佐賀県事業承継・引継ぎ支援センター承継コーディネーター)に就任し、
県内の構成機関の取りまとめ、及び事業承継全般の推進を行っている。

 

②二人三脚100時間!アトツギ甲子園へ全力練習
《豊後大野市商工会 髙屋 亮平氏》

普段は商工会連合会経営指導員として、中小零細企業の経営に関する全般の相談対応をしています。そこで日々、事業者へ巡回訪問し、事業等サポートの案内や書類申請支援など幅広く担っております。個別企業に深く関与していくので、家族構成・関係性まで把握します。

 

 そんな中、大分県事業承継・引継ぎ支援センターや大分県商工会連合会より案内があり、第2回アトツギ甲子園を知りました。そこで自身が担当させて頂いている企業の一社である株式会社パナポートクツカケの沓掛さんのことを思い出し、訪問した際にエントリーをプッシュ致しました。


過疎化していく町で、「町の電気屋」として明るく仕事に取り組む沓掛さんを応援したいといつも思っておりました。沓掛さんは熱意や行動力はとても素晴らしいものがあるのですが、資料の作成やアイデアの言語化が苦手な方なので、そこから2人で一緒になってアトツギ甲子園に取り組みました。業務で日頃利用している専門家派遣制度等も利用し、事業・アイデアについて深堀をしていき、A4用紙を何十枚も使い、経営資源や課題、新規事業について考えました。この事業で実現した未来や、将来像の共有まで2人で行っていたので、計100時間以上このアトツギ甲子園をきっかけに2人で時間を費やしてきました。きっかけがないとこのようなことには力が割けないので、沓掛さんにとってとてもいい機会になったと思います。

率直に言うと昨年はアトツギ甲子園の存在を存じ上げておりませんでした。他の支援機関の担当者の方も同じだと思うのですが、日ごろ企業・後継者の方々と接点があるとはいえ、アトツギ甲子園と聞いてピンと来ない方の方が多いと思います。今回初めて参加し、「後継者が会社を引き継いだ時に、覚悟を持ってどんな事業をしていくのか」にフォーカスしている事業は他にないので、とても意義があるものだと感じました。また、沓掛さんのように地元の後継者が、他の地域の視座の高い後継者と出会うきっかけがなく、世界が広がったと思うのでとても良かったと思います。

 

■後日、沓掛さんに高屋さんの支援についてヒアリングを実施。

「高屋さんは父親との接点の方が多く、何か一緒に取り組むのはこれが初めてでした。親身になってくださる方とは聞いていたが、100時間以上アトツギ甲子園に対して向き合ってくれ、ここまでしてくれるとは思いませんでした。高屋さんが多くの方を巻き込んで一次審査からアトツギ甲子園ファイナルまで一緒になって取り組んでくれたので、心強かったです。自分自身が苦手な分野のサポートもして下さり、高屋さんのおかげで万全の状態でアトツギ甲子園に臨むことができました。」と話している。

 

《プロフィール・経歴》

豊後大野市商工会 髙屋 亮平

http://bungo-ono.oita-shokokai.or.jp/

略歴
2011年 佐伯市あまべ商工会
2017年 豊後大野市商工会

日頃の業務
補助金申請支援、提案 伴走支援
金融支援、商品開発、商談支援他

③二人で目指したグランプリ!福井のホリタを全国へ
《公益財団法人ふくい産業支援センター 岡田 留理氏》

普段は、公益財団法人ふくい産業支援センター福井県のベンチャー支援を担当しております。福井ベンチャーピッチの企画・運営もしておりまして、事業アイデア段階からIPOの支援まで一貫して取り組んでいます。アトツギ甲子園を企画・運営をしている一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事の山野さんより本イベントの案内があり、ぜひこの取り組みに参加しようと思い、堀田さんに声を掛けました。堀田さんとの出会いは福井ベンチャーピッチの登壇企業としてでした。同イベントはビジネスマインドをとにかく磨き上げ、スピード感をあげて世界・全国に目を向けていくものですので、その中でも頑張っていた堀田さんにはぜひアトツギ甲子園に出てほしいと思いました。

 

 アトツギ甲子園の一次エントリー時点から堀田さんと2人で取り組んでいました。合計何十時間もブラッシュアップ・壁打ちをしてきました。福井県内ではまだまだアトツギ甲子園の認知が低く、機運作りから取り組む必要があると思い、応募した段階からグランプリを目指して外部への発信も積極的に行ってきました。推薦したからには堀田さんを1人にさせず、一緒に最後まで取り組む覚悟で向き合いました。

 

 アトツギ甲子園では夢を見せることの大事さを強く感じました。日々の事業・業務に要に地道に愚直に取り組むことももちろん大事なのですが、アトツギ甲子園のようにアトツギが夢を見れる場所があって本当に嬉しいと感じました。一方で、もっとプレゼンの質を上げることができたのではないかと思う部分もありました。ここに関しては、各地域の支援機関ががもっとアトツギ本人に日頃から関わっていき、支援をしていくべき領域だと思います。いずれにせよ、アトツギ甲子園のような舞台で堀田さんが輝いていて本当に嬉しかったです。

 

 常日頃から、地方の田舎企業が飛躍するインパクトはとても大きいと思っております。アトツギ甲子園はその盛り上がりの一つになるものだと思って取り組んできました。今後も福井のベンチャー支援(アトツギ含む)をやっていき、全国・世界へ羽ばたく企業を福井県から生み出していきたいと思います。

 

■後日、堀田さんに岡田さんの支援についてヒアリングを実施。

「岡田さんはホリタ文具の大ファンでもあり、自分より熱くホリタ文具のことを語ってくれます。そんな岡田さんが一次審査からファイナル大会まで一緒についてくれたのでありがたかったです。スライドを作っていて主観が強くなっているところを、自分と同じレベルまでホリタ文具のことを知っている岡田さんが客観性を補足してくれていたので、良いバランスでした。岡田さんが取り組んでいる「福井ベンチャーピッチ」のレベルの高さを、僕がアトツギ甲子園を優勝することにより一つ証明できたと思うので、そこも嬉しく思っています。」と話している。

《プロフィール・経歴》
公益財団法人ふくい産業支援センター 岡田 留理氏

https://www.fisc.jp/

同志社大学卒。開業社労士を経て、2015年、同センターに入職。
2015年よりふくい創業者育成プロジェクト(現ふくいベンチャー創出プロジェクト)を担当。
2017年に「福井ベンチャーピッチ」を立ち上げ、県内ベンチャー企業の登竜門となるピッチイベントへと成長させた。

福井ベンチャーピッチ:https://www.s-project.biz/fukui-venture-pitch

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