支援の基本は足、地道に動き回って支援体制のつながりをつくる

京都信用保証協会 
企業支援部 経営支援課
課長補佐 村井 章大さん
https://kyosinpo.or.jp/

2005年京都信用保証協会入協。入協後、保証審査や債権管理などの
信用保証業務をはじめ、広報や統計業務等、幅広い業務を経験し、2018年より経営支援業務に従事。
現在、中小企業者に寄り添った経営支援業務、事業承継サポートデスクの立ち上げと運営、
地域経済活性化に向けたアトツギベンチャーセミナーなど数々の企画を手掛ける。
「京都アトツギベンチャースクール」や「アトツギらぼ」(京都宇治)等の運営にも携わる。
趣味はキャンプで年中野営を愉しんでいる。

必要なのは“面”の支援

ピエール
ピエール
村井さん、アトツギ支援はどういうきっかけで携わるようになられたんですか。
まず、2018年に僕が経営支援課に配属されたとき、「事業承継サポートデスクの立ち上げ」を任されました。何をやったらいいのか分からず、当時3人のメンバーで話し合いをしながら、一から作っていくことになりました。
最初に企画したセミナーは、士業の先生を講師に招聘し、事業承継の上手な方法等をテーマに実施したのですが参加者の反応を見ているとうまくいったとは思えなくて、もんもんとしていました。そうした中、京都市と(公財)京都高度技術研究所主催のアトツギ支援プロジェクト「アクセラレーションプログラム」を見学する機会がありました。2019年です。
参加者の方々の熱量がすごくて、「やるならこれだ、アトツギ支援だ」と思いました。それで、同じ年に実際に事業承継をし、家業を発展させている後継者(㈱サンワカンパニー 山根社長)を講師に招聘し、事業承継セミナーを開催したのがアトツギ支援の第一歩だと思っています。このときは、アトツギの方も継がせる側の方も来ていただきました。コロナ前だったので参加者同士の交流会も実施しました。
実は、支援機関には「事業承継のセミナーで交流会はタブー。センシティブな話題になるから、参加者同士もわざわざ面と向かって話したいと思わないだろう」という暗黙のルールがあったんです。でも、僕は「それは違う」と感じていました。若いアトツギからは同じ境遇の仲間と「つながりたい」という声もありました。
実際、皆さん進んで交流されていたので、やはりこういうコミュニティの構築は大切だと思いました。
村井さん
村井さん

 

2020年度には、後継者の方を対象にしたアトツギベンチャーセミナーを、京都府北部地域で開催しました。京都府全体が対象だと支援をするにも広すぎますし、まずコミュニティは地域ごとにしっかりつくっていくものだと考えています。
また、地域課題解決の意味でも京都府北部に注目していた、ということもあります。北部は事業所数の減少や少子高齢化が顕著で、そういう地域こそ、その地域に縁のあるアトツギが活躍することが問題解決の一番の近道だと思っています。
こちらも本当にいいセミナーになりました。参加者同士や参加者と講師間の交流はもちろん、講師同士での繋がりが生まれたのもおもしろかったですね。将来地域で中心になっていく人たちの繋がりをつくれたことはすごくよかったです。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
繋がることのできる場って、意外とないですよね。では、イベントなどで難しかった点はどんなことがありましたか。
保証協会は今まで金融支援が中心だったので、どちらかというと“守り”の取り組みが中心でした。一方でわれわれの取り組みは“攻め”ですから、企画一つ練るのも大変ですし、最初は内部への説明にも苦労しました。それと、支援者のネットワークづくりのために自治体や金融機関を回るという地道な作業もあります。
われわれは「個社」の支援はもちろんのですが「面」の支援も必要と考えていて、いろいろな支援機関や自治体、金融機関等と関係性を構築して協力を仰ぐことに重点的に取り組んでいます。
金融機関とはもともとパイプがあるのでスムーズに進みますし、自治体は、広域振興局や市や町の産業振興の部署を中心に一つ一つ回ります。
村井さん
村井さん

 

 

ピエール
ピエール
金融機関ではどういう部署に行かれるんですか。反応はどういう感じなんでしょうか。
まず本部の事業承継管轄部署や地域創生のような部署に声をかけつつ、各地域の支店にも行きます。支店は地元のアトツギを一番よく知っているので。金融機関に行くと、「うちもこういうことをやりたかったんです」、「やろうと思っていたんです」という声はけっこうありますね。ただ、一方で金融機関は民間企業としてしっかり利益を出さなければいけない部分もあって、まだまだ踏み出しづらい事情もあるようです。
それでも、長い目で見て絶対必要な支援だと思っていらっしゃいます。だからこそ、信用保証協会をはじめ公的機関や自治体が旗振り役として動くべきだと、僕は思っています。その旗のもとに集まってみんなで動いていくイメージですね。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
なるほど。金融機関といえば、京都信用金庫さんにはアトツギ事業部という部署ができたとか。

アトツギ事業部(京都信用金庫様HP)はこちら

そうなんです。僕も仲良くさせてもらっています。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
京都のアトツギは心強いですね。アトツギ支援って、まだまだあまり認知されていなくて、アトツギの中には、自分が対象になるのか悩まれる方もいらっしゃいます。一方で、支援する側もどこにどんな後継者がいるのか分からないので、アトツギの名前を掲げた支援部署の重要性はすごく感じますね。

 

2022年度もアトツギ支援がもりだくさん

 

ピエール
ピエール
今年度の事業についても簡単に教えてください。
まず、宇治市にある産業交流拠点「うじらぼ」(宇治市・宇治商工会議所が共同で運営)で勉強会「アトツギらぼ みんなで学ばナイト」を始めます。月一回、アトツギの方が集まって経営者になるためのノウハウを選りすぐりの講師から学びます。
ただし、講義を聞くだけは学びがどうしても浅いものになってしまうので、講師とは別に組織活性化やコーチングを手掛けているモデレーターを招聘します。
そして学校のクラスのように、モデレーターを担任の先生と見立て、講師の講義後、参加者が学びをアウトプットする時間を設けます。そうすることでアトツギ同士が自発的に繋がり、良き仲間、良きライバルとして成長できるような学びの場をつくります。
村井さん
村井さん

 

ピエール
ピエール
すごくいいですね! 社団がまさにやりたいことです。
北部地域では、引き続きアトツギベンチャーセミナーを開催しようと思っています。京都市域では、昨年と同じくベンチャースクールを予定しています。それと、京都経済センターにあるKOINというコワーキングスペースで月一回、アトツギの皆さんに集まってもらうゼミを(一社)京都知恵産業創造の森さんと企画しています。そして、総仕上げとしてピッチですね。京都からアトツギ甲子園へのノエントリーが少ないので、京都予選みたいなかたちでできないかと考えています。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
すごくいい取り組みですよ。アトツギにとって大事なことって、身近で頑張る存在だと思うんです。地元で頑張るアトツギや憧れの先輩経営者がいれば、「自分もそうなれる可能性はある」と事業承継に前向きになる人も増えると思います。今年のアトツギ甲子園に、京都からファイナリストを出してほしいです。
支援者として、そういう人材を出すことが僕の一つの目標であり夢です。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
村井さんのことはめちゃくちゃ応援しています。村井さんが頑張ってくださることで、京都のほかの地域に「うちの地元も盛り上げたいんです」という支援者が増えると思うんです。一緒に京都を盛り上げていきたいですね。

 

アトツギ甲子園優勝、そしてその先へ進む経営者を育てたい!

 

ピエール
ピエール
今後の夢ややりたいことを教えてください。
まずは、アトツギの皆さんにやる気になってもらいたいというのが一つです。そして実際に行動に移してどんどん新しいことに挑戦してほしいですよね。当協会は、個社支援も行えるので、そういった前向きなアトツギの挑戦に伴走し、新事業創出を後押しできればと思っています。アトツギ甲子園で優勝するような、日本経済を盛り上げる企業を生み出したいです。
それと、地域において“連携”はとても重要だと思っていて、われわれのような、京都府全域が事業のフィールドになっている公的機関が旗振り役になって、アトツギ支援を目的にいろいろな機関を横串でつなぎ、連携しながら京都経済を盛り上げていきたいと思います。
村井さん
村井さん
ピエール
ピエール
甲子園も分かりやすいゴールではありますけど、そこに向かう過程で、社長になったときに必要なことも必ず身に付いていくと思うんですよね。
その部分をガッツリ支援できるというのは、まさに村井さんの本業ですね。
僕らは、支援機関の方の支援の過程を積極的に発信していきたいと思っているんですよ。
普段の本業もある中でアトツギに対してどう関わることができるのか、アトツギ支援にお悩みの方にお届けしたいんです。
今回の記事は、ほかの支援機関の方にもどんどん参考にしてもらいたいですね。

 

アトツギファーストはこちら

■取材した人

ピエール

某大手銀行に就職。その経験を活かし、アトツギベンチャーと金融機関の、次世代のあり方を世に問うべく、メディアに取り上げられるような案件をアトツギと実現することが目標。

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