賛否両論上等、「アトツギベンチャー」とは!?

同族企業大国の日本では、大企業の製品やサービスを下支えする技術の多くが、後継者が率いる中小企業から生み出されてきました。彼らの多くは必ずしも喜び勇んで継いだわけではありません。借入れの個人保証、斜陽の業界、高齢化した組織、時代遅れの社内などなど、私の周りの多くが「電卓叩いただけなら家業なんか継いでないですよ」というのも納得です。

 

でも、世の中の視線は冷たい。「七光、ボンボン」など、ドラマに出てくる華麗なる一族の傍若無人な(もしくはボンクラ)後継者イメージに、零細企業だろうが斜陽産業だろうが一括りにされることも少なくない。だいたい「跡継ぎ」「後継ぎ」という字面が良くないでしょ。すでに後ろ向きで、受け身じゃないか。すでに薄暗い。確かに、現実のアトツギワールドはどちらかというとしんどいことの方が多い。彼らの多くが、与えられた条件の中で、葛藤し悶絶しながら粘り強く自分らしい会社に生まれ変わらせていっているのに、いつの時代も世間からの同族承継への評価は厳しいわけです。

 

そこで、この世界をもっとカラフルにしたくて、彼らを「アトツギ」と呼ぶことにしました。(音声で聞くと一緒だけど、そのうち漢字を駆逐してやろうと思っている)

先日、「山野さんの最大の功績はアトツギと名付けたことだ」と知人に言われて「それだけかーい!」って思ったけど、最近ではTwitter界隈で「アトツギ」と名乗る人たちが急増していて地味に感激してます。

 

さらに、「家業の成長と永続にコミットして挑戦をするアトツギ」を「アトツギベンチャー」と呼んで、全国各地の行政や金融機関と協同で「10年後の売上の柱となる事業」の開発につながる環境づくりを行なっています。

 

 

実は、当初はこの「アトツギベンチャー」について、あえて定義してこなかったんです。というのも、私は永らく起業支援の世界にいたけど、スタートアップにもベンチャーにも明確な定義って実はないじゃないですか。定義しないことでカルチャーになっていった側面もあった。だから「アトツギベンチャー」も受け取る人がそれぞれイメージすればいいと思って、あえて言語化してこなかったんです。

 

でも、地方でのアトツギ支援が活性化を帯びてくると、ステイクホルダーの顔ぶれもさまざま。行政組織、地銀さん、信金さん、経済団体、そしてプレイヤーのアトツギ・・・要するに「アトツギベンチャー」は「スタートアップ」と「中小企業」の中間領域だけに、言葉の定義が曖昧だと、どうにも話が噛み合わない。そこで思い切って言語化したわけです。

 

 

 

我々の取り組みには、100人近い全国各地のアトツギベンチャー経営者がメンターとして参画してくれていますが、Exit型が1割、地方豪族型が4割、ランチェスター型が5割といったところでしょうか。

 

この分類については、賛否両論あるでしょう。これから議論が巻き起こり、どんどん変化するかもしれませんが、そういう議論こそ、アトツギベンチャーがカルチャーになっていくプロセスだと思って、今からワクワクしています。そして、この3類型のどのスタイルをめざすかはさておき、「家業の成長と永続にコミットする」ことこそがアトツギベンチャーであることに他なりません。

 

 

(一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事 山野千枝)

 

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