【家業にはチャンスがいっぱい?!】資金調達までしたベンチャーから家業に入った理由とは!

大阪府
株式会社カスタムジャパン 
代表取締役 村井 基輝さん

ベンチャー型事業承継の生みの親!父から引継いだ家業は社員5人の自転車部品卸商。その家業の経営資源を活用し、出島的にバイク・自転車・自動車パーツと整備工具のカタログ・ネット販売を手掛ける。
バイクと自転車のB to B通販市場ではトップシェアとなり、社員数は100人を超え、取り扱い部品点数・数10万点、自社ブランド商品も提供し、アジアのマーケットを視野に入れる規模にまで成長させた。
そんな村井さんの半生、ベンチャー型事業承継について迫る。

【前編】

【中編】

【後編】

アトツギの達人が若き君たちに贈る、事業承継を大成功へと導くカギ

トニー
トニー
村井さんが家業を継いだきっかけってなんだったんですか?

 

もとは音楽の仕事やイベントのプロモーションとか、華のある職業を目指していたんです。でもそれじゃ食えなかった。で当時、携帯電話の爆発的ブームが起きたんで「これはキラキラしてる!」って思って、すぐに携帯電話会社に就職。その後は資金調達してベンチャー企業も立ち上げちゃいました。
村井さん
村井さん
トニー
トニー
資金調達までされたんですね。成功されたのですか?

 

それがみごとに大失敗(笑)。「さて、どうしようか」って悩んでいたところ、親父がやっている家業のことが脳裏をよぎったんです。家業は部品商で、長屋に社員数名がいて、パソコンが一台置いてある程度の古臭ーい会社…。正直、「継ごう!」っていうモチベはゼロだったな。

でも、一つ気付いたことがあって、うちは赤字にはなってなかった。「キラキラしたスタートアップの中には、死に物狂いでやって、やっと黒字みたいなのばかりやな。でも、この会社はビジネスモデルが固まってる状態で黒字やん…これって可能性ありすぎと違う?!」って。

村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
家業にもどった時、周囲の反応はどうでした?

 

祖父母は大喜びや(笑)。二人ともまもなく他界したんだけど、社葬には関係各社の方々にもたくさん来ていただいて。祖父母が孫のことを宣伝してくれたってことなのかなあ…その点はラッキーだったかもしれません。先代からの人脈。これってアトツギには本当にメリットになります。基本的に可愛がってもらえるし、お客様の生の声もいただける、先代に対する愚痴も聞かされる(笑)。でもそれによって、家業の問題点も浮き彫りになって来るんですよ。

村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
事業を変革させていく過程では、やっぱりお父さんと衝突したりもしました?

 

もちろん。「もうやめるぞ!」「閉めるぞ!」みたいに、従業員にも聞こえるような大喧嘩もしたなあ(笑)。でもそれだけ真剣だったんですよね。男ってのは、やたら意地を張り合って常にライバル視する。しかもこっちは若いから、親父としたらそれだけでもう認められないんですよ(笑)。だから後継者っていうのは、女の人の方がやりやすいのかも…。でも、喧嘩したけど、やりやすさもあったかな。親父に対して最初から“敬語”で話しかけるから、なあなあにならず、ビジネス的な付き合い方ができたっていうわけです。
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
社員さんの反発もあったんじゃないですか?

 

もちろん、たくさんあった。怒って辞めちゃう人もいた。でも、後から「あんたの改革は間違ってなかった」とも言ってくれましたね。だから、みんなもめげずに“後継者の強み”を生かしてどんどん突っ込んでいくべきです。それが改革・改善のためなんだから。
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
新規事業の準備にはどのくらいの時間を要したんですか?

 

毎日、会社が終わる午後6時から夜中まで。日曜祝日も丸々使って進めていたから、半年くらいで準備はクリアしちゃったね。
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
半年ですか!休みを使っているとはいえ、すごい速さですね!少し話は変わりますが、新規事業を行うにあたってどんな準備をしておくべきですか?

 

家業に学校卒業直後に入るんじゃなく、いちど外の会社を体験することが大事だと思います。家業を”外部からの目”で捉えられるから。会社のツッコミどころを発見する力がつく。ただしキャッチアップしていくためには、日頃から物事に対して疑問を持つクセをつける必要もありますね。そこら辺のお店に入って、「なんでコレ、こんな売値やねん?」と問いかける、とかでも構わない。どんどん疑問を持ちましょう
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
通販事業を拡大させるコツが知りたいです。

 

市場規模の把握と分解です。そして、家業がその市場のどの位置にいるのかを知ること。これってお金がかかるし面倒なことなので、誰もがスルーしてしまいがちです。でもだからこそ、この部分には力を入れて欲しい。これによって市場の空白部分が見えてくるんです!
村井さん
村井さん

 

先代からの資産を活かして改革せよ!

 

トニー
トニー
改革のキモを教えてもらえますか?

 

まずは“家業を敵に回す“こと。家業の嫌がるようなことを、あえて出島的に新規事業でやります。ベンチャー型事業承継っていう言葉があるけど、ベンチャー(スタートアップ)と事業承継って、まったくの別物。だから継ぐだけじゃなく、スタートアップも出島としてやっていかないと道は開けないですね。
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
出島戦略において、まず取りかかったことってなんですか。

 

家業を完全に理解することに努めました。これをやっとかないと、出島は無理。大企業だったら話は別だけど、年商数億程度の中小企業の場合は会社をちゃんと育てていかないと。でも頑張れば、ほとんどの企業が成果を出しますよ。個人的な経験から言わせてもらうと、新規事業は既存の家業から派生させていく形が良いと思う。
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
なるほどですね。既存事業の理解が一番大事ですか。

 

「カッコ良く新しい事業を始めたい」って気持ちになるのもわかる。でも、それだとスケールさせるのが難しい。既存事業の拡大を目指した方が、スムーズに成長していくと思いますね。先代から培われてきたもの、バランスシートに載っていない無形資産を活かすべきです。“人脈”だって本当に大事だし。昔からの社員や取引先の意見…これって、高い料金払ってコンサルに委託するよりもはるかに有用で貴重ですよ!
村井さん
村井さん
トニー
トニー
なるほど。改革の過程で一番重要な存在ってなんですか?

 

やはり人脈だなあ。これを築き上げるのが大変。熱意を相手に納得させるためには、それ相当のエネルギーが必要です。自信がない時があっても、信念をもって語って欲しい。お金の部分はどうにかなるから大丈夫。出島戦略の大変さは“しんどい”ところだけです(笑)。

そして、従業員が少数の頃はとにかく話すこと。アツく語りまくる!成長過程は社員みんなが本当に忙しくなるから、社員にはそれなりのサービスもしてあげる。いったん壁を突き抜ければ、社員数なんて昨年比で200%、300%と膨れあがっていくんです。数年後には社員の半分くらいが新人になっている。初期段階の人選は、気の合いそうな人よりも自分の足りない部分を“補完してくれる人間“を選んでいくのがポイントですね。自分一人じゃ成功なんてできないので、一緒になって会社を大きくしてくれる右腕たちを大事にして欲しい。彼らはかけがえのない財産です。

村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
それでは最後に、村井さんにとっての経営のゴールを教えてもらえませんか。

 

1995年頃のパソコンブーム。あれは本当に凄かった。あのような現象が、今度は乗り物業界に間違いなく起きるね。たとえばテスラなんて最近できた企業なのに、時価総額でトヨタを抜いちゃっている。実は、中国や台湾でも似たような企業が無数に出現し始めているんです。でも日本では、そんな存在はまだほとんどない。自分はその分野に参入したいです。小さな部品商社が“未来の乗り物”メーカーとして成長していく…。いまはそんな事を夢に描いてワクワクしている真っ最中ですね!
村井さん
村井さん

 

トニー
トニー
村井さんの今後が楽しみです!本日は貴重なお時間をありがとうございました!

 

■取材した人

トニー/資本政策オタク

某大手証券会社に勤務。事業承継に関する税金や自社株式についての知識はオタクレベル。座右の銘は「死ぬほど頑張れ!絶対死なないから!」。

SNSで記事をシェア