ピッチで“壁打ち”的に自分をブラッシュアップ/ メディア露出や飛躍につながる

【大阪】
株式会社大都 代表取締役
山田 岳人氏
https://www.daitotools.com/

1969年生まれ。石川県出身。大学卒業後、リクルートに入社。6年間の人材採用の営業を経て、妻の父親が経営する1937年創業の総合金物工具商社、大都に入社。2002年にEC事業を立ち上げる。2011年、代表取締役に就任。(社)日本DIY協会が認定する「DIYアドバイザー」の資格を持つ。Forbes JAPAN「SMALL GIANTS AWARD 2018」セカンド・ローンチ賞。2020年7月「カンブリア宮殿」出演。

■話を聞いた人

合同会社ヴァレイ 代表社員
谷 英希氏
https://www.valleymode.com/

俳優・演出家、オーストラリアでのボランティアなどの多彩なキャリアを経て、家業の縫製工場を救うため25歳でアパレル企画会社である「合同会社ヴァレイ」を設立。「日本の縫製業を次世代につなぐ」という理念のもと、全国の職人や技術を持った人たちに「マイホームアトリエ」を自宅で構えてもらい、デザイナーから委託された商品の製造を依頼。新型コロナウイルスの感染拡大で医療物資が逼迫する中、4月の上旬に経済産業省からの要請を受け、総数12万着の医療用ガウンを生産。日経新聞主催のピッチイベント「スタ★アトピッチ Japan」ファイナリスト。「ガイアの夜明け」出演。

アトツギたちのトークイベント「アトツギこそイノベーターであれ!in大阪」が2020年11月15日に開催された。ゲストは、株式会社大都の山田岳人代表取締役社長と、合同会社ヴァレイの谷英希代表。

今回のテーマは「アウトプットの重要性 ピッチに関する経験シェア」。ピッチ大会や投資家へのプレゼンテーションなどアウトプットの経験豊富な二人に、ピッチのポイントや得られるもの、ピッチ大会に出る意義などを語ってもらった。

 

主催:中小企業庁、事業継承ネットワーク全国事務局(野村證券)
運営:一般社団法人ベンチャー型事業承継

 

 

DIYECサイト、縫製職人のネットワークへ、それぞれ転換

モデレーター/ティム
モデレーター/ティム
それでは、自己紹介からお願いします。

創業83年目の会社、大都の3代目です。新卒でリクルートに入社し、結婚を機に奥さんの実家の商売を継ぎました。もともとは工具の卸で、今は「DIYファクトリー」というブランドでECサイトをやっています。社員は25人ですが、年間50数億円売り上げています。

 

ビジネスモデルはいたってシンプル。日本のメーカーのDIY商品をネット通販で消費者に届ける。DIYは日本に文化として根付いていないので、これをしっかり文化にすることによって、新しい市場を創造していこうとしています。

山田氏
山田氏

僕もアトツギじゃなくて、母が縫製工場を40年ほどやっていて、倒産の危機があった時にアトツギとして入ろうかと言って断られ、それならと起業しました。

 

在宅縫製ネットワークの「MY HOME ATELIER」がメインのサービス。いろんな理由で働けなくなった職人さんたちが全国にいるので、自宅で仕事をできるようにしていこうとネットワークでつないでいます。今は全国250カ所、服作りの拠点があります。

 

コロナ禍で4月には95%くらい吹っ飛んでヤバかったんですけど、そこから切り替えて、5月の終わりから新規事業を5つ立ち上げてすべて動かして、12月には過去最高の売上が出るかなと思っています。

 

その1つが子どもたちにミシンを教える教室「ソーイングジャム」。2023年までに100教室めざして進めています。他にもマイクロアパレルブランドの支援事業や仕事着のオリジナルブランドも立ち上げました。

 

コロナ禍では経産省から国産の医療ガウンを作ろうというプロジェクトが立ち上がって、民間ではたぶん日本で一番早く作り始めたと思います。事前に安倍元首相とZoomでいろいろお話して、正式にご依頼いただきました。

谷氏
谷氏

 

 

 

 

 

ビジネスはアウトプットしないと、価値も思いも伝えられない

ティム
ティム
お二人ともめっちゃくちゃ気になる事業内容なんですが(笑)、今日はテーマが『アウトプットの重要性 ピッチに関する経験シェア』なんですよ。

 

というのも、アトツギが行動を起こす時に「どうやったらアウトプットできるかわからない」とか、「ピッチに参加したいけど話すことないよ」とか、思っている人が多いので、ぜひそのあたりを教えてほしいんです。

 

まず、どんなことを意識して、アウトプットとインプットをしていますか?

経営者は、この会社がどういう方向に向かっているかをしつこいくらい発信していかないと、まずスタッフに伝わらない。

 

お取引先もそうだし、ベンチャーキャピタルとか大手ホームセンターさんからの出資受けたりとかもあったので、その時にプレゼンテーションはやりますよね。

「うちには将来こういう価値があると思いませんか」と伝えないと、向こうはお金を何億も出すわけですから、そこはしっかりやらないと。

 

ビジネスはアウトプットしないと、価値も思いも伝えられない。会社としても個人としても、そこは意識して発信してます。

山田氏
山田氏
ティム
ティム

どのタイミングから、アウトプットを意識するようになりました?

中小企業ってリソースが豊富にあるわけじゃないやん? CM流すような広告予算あるわけじゃないから、発信しないと誰も気づいてくれない。いいサービス作っても知られなければ何の価値もないでしょ。

 

タイミングとしてはやっぱりECサイト始めてから。WEB上の店舗って誰でも出せるけど、売れるかどうかは、「ちゃんと伝えられてるか」「SEOで検索に上がるか」とかで変わってくる。サイトがあること自体、世界中の誰も知らないと売れるはずがない。

 

伝える、知ってもらう。これが大事だって、ネットの世の中になってからは強く感じる。

 

2000年の初めくらいに「これからはDIYが来る!」って言ってきたけど、世の中はDIYの意味さえ知らなかった。でもやり続けておかないと、「DIYキタよね!」という時に、そこにいなかったら間に合わない。

 

つまりね、大きな波が来る時には、もう沖にいないといけないということ。陸にいて波が来てから行くのでは間に合わない。中小企業は大手には勝てないし、沖で波を待っているくらいじゃないと。そう思ってずっと発信は続けてた。

山田氏
山田氏

 

 

 

 

1日平均28ツイート! Twitterで採用までできるようになった

僕はSNSをよく活用していて、Twitterに住んでるくらい(笑)。1日の平均を調べたら28ツイートしてました。ツイートインプレッションは月1300万回。それだけたくさんの方に見ていただくというのは大きい。

谷氏
谷氏
山田氏
山田氏

Twitterはいつからやってんの?

2年くらい前じゃないですかね。その時はフォロワー200人くらいで、しっかり内容考えてツイートするようになって、半年くらいで1万人。今1万2千人くらいになってます。

 

効果を実感したのが一昨年なんですけど、採用がTwitterでできるようになってきて、「募集します」って書くと、DMでエントリー来るようになった。今年は新卒が3人入るけどエントリーは40人来たかな。

 

新規の仕事もTwitterで来ますよ。それもBtoBで。デザイナーとして洋服作りたい人もそうだし、ネットワークに入りたい人も。

谷氏
谷氏
山田氏
山田氏

そうなん?最近、ベンチャーの起業家たちも「今はTwitterや」とか言い出してるよね。俺もやろうかなと思うけど、何書いていいかわからんねんな(笑)。

ティム
ティム

谷さんは1日平均28回ということで、30分に1回くらいやっていると思うんですけど。

山田氏
山田氏

ヒマなん(笑)?

いや、全然ヒマじゃないですけど(笑)、それ以外にもノート、ブログも書いているし、逆に情報発信しかやっていないくらい。事業は全部他のメンバーに任せてるんで。

谷氏
谷氏

 

 

 

 

ピッチやプレゼンは、ブラッシュアップや飛躍のきっかけ

ティム
ティム

そもそもピッチに出ようと思ったきっかけは?

最初の頃はコンテストみたいなところには出たことがあまりないんですよ。それより投資家向けのプレゼンが圧倒的に多い。

 

2013年に投資家をまわってプレゼンしたんですけど、当時3億円ほしかったのに、5千万しか出せないと言われて。よくよく考えると5千万しか価値がないと思われたんだと。それで、1年間ブラッシュアップして、今度は東京の投資家のところも行ってプレゼンしたら4億になった。

 

投資家へのプレゼンが“壁打ち”になって、足りないところ、組織としてダメなところがわかって、ちゃんと変わっていけた。

 

社内や業界だけで集まってもいいアイデアなんて出ない。そもそも業界の常識は世間の非常識やから、いろんな人に会って話して、「なるほどな、うちの業界に置き換えたらこうやな」とかブラッシュアップする。そのための投資家向けのピッチであり、腕試しやと思う。

山田氏
山田氏
ティム
ティム

確かに、自分が思っていることと、外からの視点は違うことがあると思うので、“壁打ち”としてピッチ大会は活用してくれたらいいですね。谷さんは、そもそもピッチ大会に出るきっかけは?

僕は逆境があったことかな。当時、お金もなくて、結婚式のご祝儀を前借りして起業して。資金調達もできなくて、何もなかったから、死ぬほど考えて「ビジネスコンテスト奈良2017」に出て最優秀賞もらったんです。それをきっかけにメディアに出してもらって。だから、きっかけがほしかったというのが大きい。

 

コロナ禍に入るくらいの時に、大手ミシンメーカーにプレゼンに行った案件で、今、資本提携しようかというところまでいってるんです。そこまでいくのに、紹介でつないでもらって大変でした。

 

でも、ピッチイベントに出るとそれだけで知名度が上がる。

谷氏
谷氏
ティム
ティム

そうです。取引先に普通はアプローチするところから始めないといけないのに、「アトツギ甲子園」は、ホームページ見てもらったら20秒くらいでエントリーできるんですよ。ぜひ参加いただきたい!

 

 

 

 

ピッチの上手い人を見て、参考にするのがおススメ!

ピッチっていうと、ベンチャーがやるみたいなイメージがあって、すごいアイデア出さないといけないと思っているのかもしれないよね。実は全然そんなことなくて、アトツギには家業があるわけだから、「もっとやりやすくなる方法」とか「業界がよくなるようなアイデア」でもいいと思う。

山田氏
山田氏
ティム
ティム

僕たちもお手伝いしますが、エントリーしてから何をすればいいかわからない人に、アドバイスお願いできますか?

僕はTEDをよく見ていましたね。話し方とか間の取り方とか、話す順番とか。経営者仲間でも上手な人がいるんですけど、彼に聞いたらやっぱりTEDを見ていると言う。それで、「彼も天才じゃなかった。練習で身につくんだ!」と思った。

山田氏
山田氏

僕もTED見ましたね。落語とか芸人さんの話とかも見ますよ。上手い人を見て参考にするといいと思います。

谷氏
谷氏

 

 

 

ピッチ大会に出れば、協力者や仲間、メディア露出が増える!

ティム
ティム

ちなみに、ピッチをやった後と前での変化はあります?

壁打ち的な要素はあるので、その時受けた質問とかから「ここがわかりにくいんだな」「ここに信憑性ないんだな」とかわかる。外から見るのは大切で勉強になる。たまにボロカス言われることあるんでね。やればやるほど経験値は上がっていくと思ってます。

山田氏
山田氏

完全に同意。あと、うちのファンの方たちとメンバー、社内が変わるのが大きい。僕が出た時はオンラインだったのでメンバーは全員見てくれてて、「代表はこんな未来創りたいんや」と思ってくれた。

 

実は毎日、結構長めの朝礼で社内に同じこと言ってるんですけど(笑)。それを外に向けて言ったら、「社長!言ったからにはやらないと」と思ってもらえる。

谷氏
谷氏

あと、仲間とか協力者が増えていく。そういう未来創りたいなら協力するよ、と。お客さんになってくれることもあるし、採用にもつながったり、応援も広がっていく。

 

「アトツギ甲子園」、すごい審査員でしょ。そういう人たちが協力者になるかも、と思ったら、めっちゃいいじゃないですか。年齢制限なかったら俺も出たいもん(笑)。

山田氏
山田氏

メディアに出る機会も増えますよね。僕がWBSに出た時は、その後、1日で3社の制作会社から「『ガイアの夜明け』出ませんか」って連絡ありました(笑)。

谷氏
谷氏

「アトツギ甲子園」は東京なら、かなりメディア来るんちゃう?世の中に知らせていくという意味では、メディアはありがたいから、利用せんとね。

山田氏
山田氏

 

 

 

 

新しいことを始めたいなら、まずは本業を200%やって知れ!

ティム
ティム

見ている方からの質問です。「事業承継されて長い山田さん、一番に何から始めましたか?」

入社したタイミングで言うと、本業を200%やった。今の事業を誰よりも理解して、仕事が早くなるかを考えて、5年トラック乗った。最初は新規事業やる余裕ないから、この世界をまず覚えるために、展示会でもあったらどこでも行ったね。商品覚えないと話にならないから。

 

3年やって、全部わかった。「ここには先がない」と。それなら新しいことやろうと踏み切れた。本業を誰にも文句言われないくらいやってから新しいことをやって、少しずつその比率を逆転させていった。僕も完全に事業が切り替わるまで10年くらいはかかったね。

山田氏
山田氏
ティム
ティム

質問の人は女性で、ダンナさんの家業に入って代表になった方なんですよ。

え!……であればよけいですね。アトツギのDNAがないんだから。

大きな改革はよそ者のほうがやりやすいところがある。ある意味、いいポジションだと思いますよ。

山田氏
山田氏

僕もまずは業界を知ることから始めて、自分で工場やったから、無理だとわかった。半年やって「どうやっても赤字になるよね」と母に言ったら、「そうやろ?」と言われました(笑)。それで、いろんな仕組みを考えて、ピッチに出たんですよね。

谷氏
谷氏

 

 

 

 

アトツギよ、もっとシンプルに仕事を楽しもうよ! 

ティム
ティム

最後に、若いアトツギの方にエールをお願いします。

アトツギというのは起業家とは違うから、「家業を継ぐ」ということをネガティブにとらえがちですよね。アトツギとして入社した時は僕も腐ってて、面白くない、やりたくないと思ってたけど、途中から「自分がやるべきことをどうやって好きになるか」を考えた。

 

それで、この事業って社会的に意味があると考えたら面白くなった。古い業界やからライバルも少ないし。こんなふうにどうやって気持ちを切り替えていくかが大きいと思う。

 

会社にはBSに載っていない、受け継いできた資産が必ずあるので、そこからどうやって未来を創っていくかが大事。それはタイミングがあるし、ピッチを使うのも1つの手。

 

とにかく、経営者が「仕事楽しい!」と思わないと会社は成長しない。腐っている経営者の従業員が仕事を楽しむことはないので。

山田氏
山田氏

アトツギもイノベーションも義務じゃない。やらなくてもいい。儲かっていればいい。

 

考え方はもっとシンプルで、もっと楽しみたいとか、もっと目立ちたい、稼ぎたい、モテたい、世界を良くしたい、みたいなことでいいと思う。今が楽しくなければ楽しくするしかないわけで。

 

仕事は自己表現の時間なので、そこが楽しくなければ人生損すると思う。ピッチは殻をやぶる大きなきっかけになると思うので、「アトツギ甲子園」も楽しんで出ていただければいいんじゃないかと思います。

谷氏
谷氏
ティム
ティム

お二人とも、ありがとうございました。

 

 


アトツギ甲子園HPへ

 

■取材した人

ティム/マスオ型アトツギ

コテコテの理系男子の元ITエンジニアから結婚を機に土建屋アトツギへ華麗なる転身。この選択は正解だったのか...俺たちの戦いはこれからだ!!!

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