アトツギ甲子園が「甲子園」になった理由

2022年3月12日、中小企業庁主催で中小企業の後継者及び承継予定者を対象としたピッチイベントが開催されました。

この事業に「アトツギ甲子園」と名づけた某社のAさんという方がいます。
高校野球のごとく、地元から送り出されたアトツギが、全国大会の舞台で実現したい家業の未来を語り、優勝できてもできなくても、地元が彼らの勇姿を讃える。彼らの姿を見て「地方だから」「親父が反対するから」「規模が小さいから」・・・いろいろ言い訳をしていた地元の若者も「自分もあのステージに立とう」と挑戦を始める。そんなアトツギが次々と地元に誕生する。地方のための政策。だから甲子園なんだと。めちゃ腹落ちです。

 

今年で第二回となった「アトツギ甲子園」、まさに日本経済に地殻変動が起きた1日でした。私は運営スタッフなのに感動しまくっていてずっと泣いてました(笑)。

でも彼らのピッチを見て「アトツギが描く未来は地域の未来だ」って思ったのは私だけじゃなかったはずです。彼らの挑戦を地元が応援しない理由はない。だからファイナリストの地元の方は、凱旋する彼らを讃えて、事業化を応援してください。地元のメディアの方は彼らの挑戦を地元紙や地元メディアで多くの人に知らせてください。彼らの秘めた想いと覚悟をピッチで初めて知ったという社内の皆さんも、これからは彼らと一緒に走ってください。行政の仕組みや制度だけじゃダメ。地域の皆さんが応援して彼らがロールモデルになることが、後進が生まれることに繋がりますから。

 

そして「アルプス席」にも、多くのサポーターの姿がありました。
優勝した堀田さんを送り出し、準備を伴走し、当日最前列でピッチを見守り、グランプリが決まった瞬間、号泣したふくい産業支援センターの岡田さん。九州勢を応援するために会場に駆けつけ、終始涙目で見守った九州経済産業局の橋爪さん。そして15人を2週間の間、メンタリングしてくれ、彼らのピッチをオンラインで固唾を飲んで見守ってくれた全国のアトツギベンチャー社長の皆さん。社外にも同志や味方がたくさんいる、それがこれからの時代を生きるアトツギベンチャーの在り方かもしれません。

 

一般社団法人ベンチャー型事業承継では、跡継ぎでも後継ぎでもなく「アトツギ」を一つのセクターとして、未来の社長が新領域に挑戦する「アトツギベンチャー」という新たなジャンルを勝手に創って命名しました。

 

ある北海道のアトツギが「アトツギベンチャーという言葉に救われた。家業に入った自分も挑戦していいんだといわれてる気がする」と言ってくれました。スタートアップでもない、中小企業でもない、その中間領域。IPOもものすごいスケールアップもしないかもしれない、でも地域に根を張って、簡単に諦めるわけにはいかない人たち。「アトツギが描く未来は地域の未来だ」。家業のみならず地域や業界の未来を背負って、心が揺さぶられる魂のピッチをしている15人の姿を見て心からそう思いました。

 

私たち逃げ切り世代とは違う、今を生きるこの世代にしかできない挑戦があります。今回ファイナリストにはなれなかったけど、家業のフィールドで新しい事業に挑戦しようと奮闘している123人のアトツギが存在していること。エントリーしなかったけど、新しい事業をやりたいと思っているアトツギも全国各地にきっとたくさん存在していること。

 

私たち逃げ切り世代は、彼らの芽を摘まず「やってみなはれ」といえる世界を一緒に創りましょう^^。来年のエントリーは1000人だ^^。最後になりましたが、この事業の趣旨に賛同し、「アトツギに刺さりまくる」厳しくも愛に溢れる数々の金言を下さった、スノーピーク山井さんをはじめとする審査員の皆様に心より感謝申し上げます。

 

◆新しい事業に挑戦中の全国のアトツギたちはこちら

 

一般社団法人ベンチャー型事業承継
代表理事  山野千枝

 

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