敏腕マスオアトツギが描く 会社と自動車産業の未来
旭鉄工株式会社
代表取締役社長 木村 哲也さん
木村哲也氏はトヨタ自動車に21年勤務後、結婚相手の家業であり、同社の1次仕入先でもある旭鉄工株式会社に婿養子として転籍した。いわゆる“マスオ型”のアトツギだ。
トヨタ自動車に在籍中の最後の3年間は技術部から生産調査部へ異動となり、“カイゼン”を学ぶ。
転籍後は家業の製造現場を改善すべく、IoT技術を用いたモニタリングシステムを開発・運用し、年3億円以上の労務費節減に成功。このシステムの運用と製造現場の改善ができるメンバーによるコンサルティングを他社にも展開しようと、i Smart Technologies株式会社を立ち上げた。現在、木村氏は2社の代表を務めるが、これで終わるつもりはなく、「業界の未来への貢献」までを視野に入れている。
歯に衣着せぬ痛快な物言いと、圧倒的な行動力が魅力の木村氏。どんな壁が立ちはだかろうとも、それが最短かつ正しいゴールへの道なら乗り越えてゆく。その源泉となる強い気持ちはどこから来るのか。
出典:令和2年度中小企業庁/プッシュ型事業承継支援高度化事業/「ロールモデルのクローズアップ」事業「継ギPedia」(http://tsugipedia.com/)
「3年間メモだけしてろ。何も変えるな」
「木村家のためじゃなくて旭鉄工のために働こう」
実力レベルの違いが明らかだし、向こうが僕を怒らせたんですよ。親戚のおばさんが亡くなった時、その方が持ってた会社の株が三億円強になってたんですけど、父は僕に「借金して買え、給料は増やさない」と言うんですよ。トヨタ時代とそんなに変わらない給料しかもらってないのに、ですよ。三億円も払えるわけがない。
僕は好きな仕事も辞めてここに人生捧げてて、凄く成果も上げてるのに、なんでそんなことしないといけないんだ!って思って、会社辞めようとしたけど、総務部長に「従業員が困るから」って止められて。じゃあ、木村家のためじゃなくて旭鉄工のために働こう、その代わり自分の思うようにやる、と決めました。
「変えない」ことを選択していないか
この延長では未来を描けない。大変なのはこれからだ!
そう。僕は経営者の仕事って2つあると思ってて、1つは「日常のオペレーションをまわすこと」。もう1つが「未来を考えること」。そっちをやってない経営者ってすごく多いって思ってる。
僕は今まで会社の中でいろんなことにチャレンジする風土を作りつつ、改善活動が進むようなメンバーを育ててきた。改善の効果も上がってるし、みんな自立的に会社の方針に従ってやってくれるようになりました。それはできたんですよ。
自ら実践!社内文化の醸成への工夫と努力
自動車産業の未来に向けて、サプライヤーの再編成に取り組む
息子に継がせるつもりはないです。これからの時代、旭鉄工単独で生き抜くのは無理なんで、いずれはどこかと合併したりとかの根本的な対応が必要だと思います。
旭鉄工っていうか、従業員の雇用を守るためですね。たぶん旭鉄工だけじゃなくて同じようなレベル、規模感の自動車業界にいる仕入れ先って同様に苦しいと思っていて……。
このまま今みたいに会社が乱立した状態だと、国内の自動車生産台数が減った時に値段のたたき合いが始まるんですよね。これが始まると大手メーカーでも立ち行かないところが複数出てきて、部品産業が立ち行かないと日本自体が大変なことになる。
【愛知】
i Smart Technologies株式会社 代表取締役社長 CEO
旭鉄工株式会社 代表取締役社長
木村哲也 氏
■取材した人
マッキー
大学卒業後、某ベンチャー企業にエンジニアとして就職。実家は福岡の物流企業。家業に戻るまでに、アトツギベンチャー経営者の体験をシャワーのように浴びようと、副業で「アトツギU34」に参画。全国各地のイベント運営やアトツギベンチャー経営者の取材などに携わる。