「全国のお菓子屋さん応援サポート業」へ!家業の歴史を引き継ぎつつ、時代をとらえた企業を目指してさらなる成長を

株式会社愛起
常務取締役 多久田 篤希さん
https://www.aiki-pack.com/bussiness/history/

1992年7月19日愛知県生まれ
高校卒業後東京へ。商学部卒業後株式会社ニトリHDの事業会社で物流のITを用いた改善や新規事業などに携わる。
2019年株式会社愛起入社。現在常務取締役で業務改善と新規事業に取り組む。
モットーは常に現状否定。理想は高く。

祖父、叔父、父、従業員が築いた70年の歴史を終わらせたくなかった

トニー
トニー
まずは家業とご自身について、ご紹介をお願いします。

家業は製菓・製パン包装資材の専門商社です。創業は約70年前、お菓子のパッケージを扱い始めてからは50年になります。リボン1本から箱、トレー、袋、そして機械まで、幅広く扱っています。東海三県の和洋菓子店、ベーカリー、レストラン、ホテルの中のペストリーなどが主な販売先です。
僕は2019年の2月に家業に戻って、現在は常務として、業務改善と新規事業立ち上げを主に担当しています。でも、もともとは家業に対する意識はなく、大学進学を機に名古屋から東京に出ました。卒業後は、誰もが知っている大手家具・インテリア企業に入社し、当時は、このままここで働くのだろうと思っていました。
多久田さん
多久田さん

 

トニー
トニー
どういうきっかけで家業に戻ろうと思ったんですか。
2018年の夏だったと思いますが、父が病気になりました。おかげさまでいまは元気にしていますが、その時は、「僕が戻るか会社を売却するか」という状況になったんです。おじいちゃん子だった僕としては、祖父が創業した会社がなくなるかもしれないという事実を前に、「家業の屋号がほかの会社になるなんてダメだ」と思い、戻ることにしました。
多久田さん
多久田さん

トニー
トニー
家業や家族への思いがあったんですね。
思いがあって、あとは「なんとかなる」ぐらいの気持ちでした。軽く捉えていたわけではないけれど、愛起が何をしているかもよく分からないまま、決算書も見ずに帰ってきました。
多久田さん
多久田さん

 

まずは家業のやり方に従ってみる

 

トニー
トニー
戻られた当初は、家業にどのようなことを感じましたか。
万人規模の会社から40人規模の会社に移ったわけですから、違和感はありました。当時の僕が「これは良くない」と思ったのは、あらゆることが仕組み化されていない点、そのためにジャッジに迷うという点です。業務の属人性がかなり高いと感じました。前の会社は仕組み化が進んでいたから、いろいろなことが誰にでもできるようになっていたんですね。
ただ、僕は、まずは何も言わずに取り組んでみようと思いました。いろいろ見えてきてから、「おかしい」と思うことは変えよう、と考えていたんです。やっていることには何か意味があるのかもしれないと思い、一つ一つノートにメモすることもしていました。おかげで、いざ変えようとしたときに反発があっても、言葉で説明することができました。それに、意外と従業員も「おかしい」と思っていることは多かったんですね。僕が「こういうふうに変えます」と言うと、皆さん、「わかりました」と言ってくれます。
多久田さん
多久田さん
トニー
トニー
多久田さんがまずはご自身で経験して、そこから感じたことを言語化して説明する、その過程が、従業員さんには丁寧に感じられたから受け入れられたんでしょうね。
僕は性格的にすごく慎重派なんです。かなり石橋をたたいて渡る主義なんですよ。可能性を感じて「これだ」と思えば、かなり大胆に進んでいくんですけれどね。
多久田さん
多久田さん
トニー
トニー
では逆に、「ここがいい」と思ったところはありますか。

「マニュアル化されてない」ところには、逆にいい面もありました。マニュアル化されていないのに、みなさん長年の経験で自己判断ができるんです。すごいことだと思います。
先代の会長は、「うちは人で成り立っている会社だ」とよく言っていました。実際、愛起のビジネスモデルは人件費率がものすごく高い部類に入ると思います。人海戦術でカタログを配り、注文を取りに行き、自分たちで商品を運んで完結です。
でも、それがうちの強みなんです。「こまめに顔を出してくれて、提案をしてくれる。だから愛起から買っている」「電話の対応は愛起が抜群」など、「人」の部分をお客さまにも実感していただいているのはすごくいいことだと思っています。誤出荷も少ないのですが、これも人の目で確認しているからです。
ただ、バランスは大事だと思っています。うまくデジタルを組み入れて無駄な定型作業やイレギュラーを減らし、お客さまと話す時間を増やせるよう取り組んでいきたいです。自動化できるところはどんどん自動化しつつも、電話対応や訪問営業を全てオンラインにしてはいけないと肝に命じています。
多久田さん
多久田さん

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前進するために常に新しいことに挑戦したい、挑戦しなければいけない

 

トニー
トニー
多久田さんが新規事業に乗り出されたきっかけは何ですか。
もともと入社当初から、「何か新しいことをしないと会社は終わる」という思いがあったんです。前職では「現状維持をしているだけでは後退していく」という考え方が社内に浸透していて、僕は、常に新しいことを続けなければ現状維持すら困難になる、というマインドでここまできました。
大きな転換点はコロナ禍です。2020年度の売上がここ十数年で最低に陥りました。急いで何かをしなければ、と始めたのが通販事業でした。若いオーナーさまは包装資材をネットで買うことが当たり前になりつつある、という情報はキャッチしていましたし、一方でネット販売を本気でやっている業者は少ないという話も聞いていましたから、チャンスだと思いました。
現在は、通販事業を成長させることを、社のミッションの一つとして位置付けています。将来的には、お菓子屋さんの困りごとを解決できる複合事業会社として、事業体をいくつか作っていくというビジョンを描いています。「全国のお菓子屋さん応援サポート業」になりたいんですよ。包装資材業のままでは、脱過剰包装、脱パッケージの時代には会社が不要になってしまいますからね。
多久田さん
多久田さん

トニー
トニー
いろいろなことを考えていらっしゃるんですね。その流れの中で、アトツギ甲子園はどういう理由で出場を考えられたんですか。
一つは、社外評価がほしかったからです。社内では、僕が何か提案をして「やる」と言ったら、それはおそらくやることになります。「ちょっと心配している」と言えば、「じゃあ、やらないほうがいいのでは」となるでしょうし、正確な判断が出てこないんですよね。だから、世の中が愛起をどう評価するのかを確かめたかったんです。それに、社外での評価は社内を説得する手段にもなると考えていました。
そしてもう一つ理由があるとすれば、僕にとって締め切りを設けることが事を進めるいい機会になるからです。怠けがちな人間なんです。でも、面倒くさいと思うことも、取り組んでみれば得るものは必ずあるので、僕は継続的に何かの機会に参加したいと思っています。アトツギ甲子園が終わった後は、「久々に勝負ごとを経験した」と感じました。僕はずっと体育会系だったので、久々に体育会系魂に火が付きましたね。帰りの新幹線の中では、今後1年間でやることをずっと書いていました。
多久田さん
多久田さん
トニー
トニー
では最後に、会社やご自身の今後の目標や夢をお聞かせください。
愛起としての夢は、先ほども言ったように、日本中のお菓子屋さんのソリューション企業になることです。
ここ2、3年で成し遂げたいことは、過去最高の売り上げを達成することですね。おかげさまで、コロナ禍を乗り越えて2期連続で増収増益です。もう少しで手の届くところまで来ています。それと将来のことを見据えて、もう一本、新規事業の矢を放っておきたいですね。
最後に、中小企業は大企業と比べると、働いている側の意欲を高めるような福利厚生や就労環境の整備が遅れがちなので、そういう部分にも手を打っていきたいと思っています。
多久田さん
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■取材した人

トニー

某大手証券会社に勤務。事業承継に関する税金や自社株式についての知識はオタクレベル。座右の銘は「死ぬほど頑張れ!絶対死なないから!」。

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