2022.09.30
マクアケ

【エヌエヌ生命&Makuakeアトツギピッチ優勝者企画】周りのサポートのおかげで苦労も乗り越えられた、アトツギとして頑張れた

乗富鉄工所
取締役 乘冨 賢蔵さん

創業75年の水門メーカー㈱乗富鉄工所アトツギ。職人技を生かしたアウトドアブランドN.L(ノリノリライフ)立上やキントーンを活用した業務改善、雑談から生まれた制度で働きやすい環境づくりしたりと鋭意経営改革中。アトツギピッチ2022グランプリ。

「周囲の力があってこその優勝でした」

ゴードン
ゴードン
改めて優勝おめでとうございます。いまのお気持ちをお聞かせください。

やっぱりうれしいです。こういうコンテストで優勝したことがなかったですし、かなりいろいろな苦労を乗り越えてきたので、それを認めていただけたのが素直にうれしいですね。いろいろな人から「この商品、いいね」と言っていただけたし、Makuakeの中山社長をはじめとした錚々たる面々に評価していただけて、ものすごく自信になりました。僕らはもうずいぶん長いことあの商品に向き合ってきたので、正直、どう思われるかが自分たちではよく分からなくなっていたんです。だから、皆さんの声が聞けてよかったです。
乘冨さん
乘冨さん
あと、これはどうしてもお伝えしたいのですが、今回の優勝は周りのサポートのおかげです。製作に携わったメンバーに、アトツギ仲間、誰が欠けてもこの製品はできなかったと思っています。ピッチ本番までの壁打ちやメンタリングでアドバイスを下さったメンターさんたちのアドバイスは、プレゼンにかなり盛り込んだので、あれがなかったら本番はここまで来られませんでした。
また普段は福岡にいるので東京に呼ばれたこと自体、テンションが上がることだったし、かっこいい場所でピッチをさせていただいたりファイナリストのメンバーとも仲良くなったりして、すごく楽しかったです。
乘冨さん
乘冨さん

ゴードン
ゴードン
今回のピッチはどういうきっかけで応募されたんですか。
もともと製品をMakuakeに出すことは決めていて、そのタイミングでピッチ開催の発表があったので「出るしかない」と思ったんです。自分たちの製品を知ってもらうためにも、第二回アトツギ甲子園で予選落ちしたリベンジにもちょうどいいと思いました。
いま思うと、今回のピッチは僕の自己紹介でしたね。「こんなことやってるヤツが僕です」って。ビジネスの場の出会いでは単に「仲良くなりたい」というのもありますが、経営者はみんな「出会いを何かにつなげたい、この人とどこかで何かを一緒にやれないか」と常に思っています。だから、手の内を明かしておきたいんですよね。どこで何が引っかかるか分からないですから。
乘冨さん
乘冨さん
ゴードン
ゴードン
自己紹介につながるプロダクトを持つことは、アトツギにとって大事ということですね。

職人の技術を生かしたい、ブランドを広めたい、売れるもの”を作りたい

 

ゴードン
ゴードン
改めて、今回発表されたプランについてお聞かせください。
まず、僕らはもともと水門を作っている会社で、鉄鋼職人、うちではメタルクリエイターと呼んでいますが、彼らは水門以外にもいろいろなものをDIY的に作れるので、その技術を何かに生かしたいということで、ノリノリライフというキャンプ用品のブランドが生まれました。3年前にスタートして、いまは全国のキャンプ用品店に置いていただいたり、キャンプ雑誌で紹介していただいたりという状況です。一方で、キャンプをされる方はそれほど多いわけではありませんから、もっと広くいろいろなシーンで使ってもらいたいと、万能アウトドアグリルを開発したんです。
乘冨さん
乘冨さん

ゴードン
ゴードン
グリルはどういうところから着想を得たんですか。
もともとノリノリライフというブランドが生まれる最初のきっかけは、当時の上司が柳川市のイベントでピザ窯を見て、僕に「ピザ窯を作れ」と言ってきたことだったんです。
ただ、うちでは石窯に使うレンガの技術があるわけではありません。それと、当時進めていたノリノリワークスという省力化製品のブランドが全然売れていなかったので、マーケティングをした上で売れるものを作っていかなければ、という気持ちがありました。そこで、地元のキャンプ用品店と本職のピザ職人さんにいろいろとお話を聞いたんですね。その時にピザのほうはちょっと難しいと感じたので、まずキャンプ用品のほうに踏み出しました。その後、アウトドアでも使えて、ピザ窯みたいなもので……と言っているうちに、最終的にいまのグリルの形になっていきました。
乘冨さん
乘冨さん

アトツギファーストはこちら

 

アトツギは家業と市場をつなぐ“くさび”

 

ゴードン
ゴードン
3年前のスタートからここまでのご苦労や、印象に残っている出来事などを教えていただけますか。

職人さんが最初に考えてくれたことが素晴らしいものだった、ということは強調しておきたいと思います。僕は「アウトドアでも使えるピザ窯」とは言いましたが、「オーブンがあってその上でバーベキューができる」なんて要件定義は特にしていなかったし、「木で覆ってほしい」ということも言っていなかったんです。でも、こちらのコンセプト的なところを職人さんがしっかり形にしてくれたのは、やっぱり素晴らしかったと思うんです。
苦労というと、途中でデザイナーさんに入ってもらったのですが、職人さんとの相互理解がすごく大変でした。職人さんの世界とデザインの世界はけっこう違いますからね。
乘冨さん
乘冨さん
僕はデザイン経営なども勉強しているので、スタイリングだけがデザインじゃないと思っていますし、デザイナーもなるべく上流のコンセプトづくりなどから参画するものと思っています。でも、職人さんには理解しづらい考えなんですよね。職人さんの基本的なスタンスは、「機能と価格が完璧になってから、最後にできる範囲で見た目も考えればいい」といったものなんです。だけど、価格を抑えて機能を作り込んだあとにできることって、色を変えるぐらいです。そういうやり方もあるとは思うのですが、僕が欲しいものじゃない。
乘冨さん
乘冨さん

ゴードン
ゴードン
(笑)。
今回は、職人さんがデザインをまったく分からない人ではなかったので、そこが余計に難しかったです。職人さんにデザインまで任せてもそれなりに売れるモノはできていたと思っているし、なんならもっと早くできていたでしょう。ただ、この職人さんのデザインの方向性って、機能性のほうに向いていて、それもまたカッコいいのですが、今回はどうしても高価格帯の商品を作りたかったんです。目指しているラグジュアリーなカッコよさとは違うな、と思いました。
乘冨さん
乘冨さん
ゴードン
ゴードン
気持ちが折れそうになったりしませんでしたか。
だいたい折れそうになっていました。僕はデザインのことをかなり強調しているので、それも職人さんにはおもしろくないみたいですね。「お前はデザイナーと職人とどっちの味方だ」と言われたりもしました。
でも、僕というくさびがなかったら、今回の製品は絶対にできていませんよ。
乘冨さん
乘冨さん
ゴードン
ゴードン
職人さんがいなければ完成できなかったのは間違いないけれど、マーケットに受け入れられるにはデザイナーさんも必要ですよね。そして、そんなデザイナーさんを引っ張ってこられるのは、時代を読むことができるアトツギですからね。家業のリソースと、アトツギの自分らしさを掛け合わせるところで苦労するアトツギは多いのだろうな、ということを感じるお話でした。
では最後に、これからこのピッチに出てみようかと考えているアトツギに、エールをお願いいたします。
やっぱり出たほうがいいですよ。負けても悔しい思いをする以外のデメリットは特にないですから。もしうまくいけば、いいこともいろいろあります。知り合いも増えるし、いろいろなつながりができることがあるので、楽しいですよ。メンターさんのアドバイスもめちゃくちゃ参考になります。ぜひ、ぜひ! チャレンジしてほしいと思っています。
乘冨さん
乘冨さん
ゴードン
ゴードン
いやあ、めちゃくちゃいい言葉、いいお話でした!

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〈本事業はエヌエヌ生命保険株式会社による特別協賛頂き実施いたしました。〉

■取材した人

ゴードン

家業である和紙卸問屋で4代目候補として8年従事。アトツギの苦悩を誰よりも理解していることから、孤軍奮闘するアトツギに感情移入しがち。関西大学「ガチンコアトツギゼミ」非常勤講師。

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