元中学教師、今アトツギ 北海道月形町を家業で面白くする
株式会社山ス伊藤商店
営業 梅木悠太 氏
「家業を継ぐ=事業を継ぐ、ではないと思うんです」。
そう話すのは株式会社山ス伊藤商店のアトツギ、梅木悠太氏だ。同社は、北海道空知地方、月形町という人口3000人の町で、100年以上の長きにわたって商売を続けて来た。創業当初は金物屋・雑貨商として主に農業関係の顧客を多く抱えていたが、時代に合わせて業態は変化し、現在では工事現場の資材や金物を卸す。役場や刑務所、消防署なども顧客を抱え、町の総合商社いわば「何でも屋さん」として地元を支える。
五代目の梅木氏は、教員というキャリアを経て、家業に入社。日本経済新聞社主催のスタ★アトピッチなど、目の前のチャンスに果敢に挑戦している。「出たがりで落ち着きがない」と自己分析する梅木氏だが、その行動力の源泉はどこにあるのか。鰹節屋のアトツギ、ズッキーがきく。
出典:令和2年度中小企業庁/プッシュ型事業承継支援高度化事業/「ロールモデルのクローズアップ」事業「継ギPedia」(http://tsugipedia.com/)
教員から一転!寂れていく故郷をなんとかしたくて家業へ
献身的な配達サービスを強みに、通販では届かない領域を網羅
昔はたくさんいたけど、公共工事が一気に減った時代に、競合のお店がバタバタ潰れたらしくて。ただ、地元の競合もですが、今後はホームセンターやアマゾン、モノタロウとかのネット勢力の脅威は大きいですね。
あ、でもね。工事現場って、ネット勢力とかにしたら届け先がわからないからカバーできないこともあるんですよ。それが僕らが配達に力を入れる理由です。掛売りとかも含めて、なんだかんだ昔ながらのやり方が強みになってますよね。
こっそり外堀を埋めている新規事業・エディブルフラワー
チクショー!ですよ。でも結局、先代が気にしているのは資金面だろうと思ったので、実はいまこっそり北海道の経済産業省が主催するオープンイノベーションチャレンジピッチというのに応募してるんです。大企業と中小企業をマッチングして新規事業や課題解決に取り組むというもの。うまくいけば工場建設の資金に充てられるのでは?と思っています。こうやって、行政とか信用がある外堀から埋めていけば社長もNOとは言いづらいだろうと。
去年も北海道の某有名お菓子メーカーに、資金提供を目的に事業プレゼンしに行ったんですが、それは見事に惨敗しました(笑)。
責任と覚悟を負う立場の人しか、地域を面白くできない
町の若手と「つきがたデザイン」というグループを作って町おこしに取り組んでいます。農家さんを集めてファーマーズマーケットをしたり、ワークショップをしたり。
地元に帰ってから、町の会議には顔を出すようにしていました。そこで知り合った40代の方に「町の会議に出ているだけじゃなにも変わらないよね」って言われて。僕も全くの同意見だったので、一緒に民間から町を良くしていこうと動き始めたんです。
そう思います。同じ志の人はいるはずだから。いないって言う人は、探してないだけだと思いますよ。いろんなところに顔を出しておくと、出会いのチャンスも増えますね。
挑戦しつづける10年間にしたい
そうですね。これからの時代、一つの事業をひたすら深めるより、複数の軸を持つことが必要ではないかなと。つまり、専門家よりも何でも屋の時代なのではと考えています。
なんだかんだ言って自分が楽しそうだと思うことをやりたい!って話なんですけどね(笑)。
だから今の自分にできるチャレンジはどんどんしていきたいと思います。昨年、日本経済新聞のスタ★アトピッチに北海道代表として出たんですけど、それがきっかけですごくいろんな方に声かけていただけるようになりました。ちょっとチャレンジするだけでめっちゃ世界は広がりますよ。
【北海道】
株式会社山ス伊藤商店
梅木 悠太 氏
■取材した人
ズッキー
1994年生まれ。大阪で140年続く老舗鰹節屋に生まれてしまった生粋のアトツギ。専門商社退職後、東京で動画制作会社を創業。最近は本業にも徐々に関与するようになってきたため、起業家と後継者のハイブリッド型のアトツギの道を探る日々。趣味は料理。最近魚を三枚におろせるようになったことを周囲に自慢してはスルーされている。