
ゼロイチを経験したからこそわかる、家業のありがたさ/地の利を最大限生かし、次々に小プロジェクトを立ち上げる

株式会社福地組 専務取締役
福地 一仁 氏
https://www.fukuchigumi.co.jp/
大学院卒業後、三菱商事にて勤務。入社当初は、中国・韓国向けの半導体設備の海外営業に従事。その後、グループ会社に出向し、不採算拠点の統廃合や本社移転などのプロジェクトを担当。2013年から約5年間、東南アジアのタイに駐在し、国内メーカーとJVを設立。販売から人事・会計マネージャ、調達部長、部品部長などの任務にあたる。タイの地方都市30県以上でビジネスパートナー探しを行い、ディーラー網を構築。また、現地の同業他社のM&Aを行い、PMIなどを経験。2018年8月に同社を退職し、9月から家業である福地組に入社。入社後は、既存事業の強化に注力しつつ、2つの新規プロジェクトを立ち上げて収益化に向けて取り組んでいる。
株式会社okicom 常務取締役
小渡 晋治 氏
https://www.okicom.co.jp/
大学卒業後、米系証券会社にて勤務。シンガポールでMBAを取得し、2017年に父が創業した株式会社okicomを事業承継する為に沖縄へ戻る。okicomでは、経営陣として企業ブランディング、HR、経営戦略全般を担当している他、既存事業領域外の分野で新しいビジネスを作る新規事業企画部を設立しチームをリード。2018年からは、中小機構にて国際化支援アドバイザーに就任し、県内中小企業の海外展開を踏まえた経営アドバイザーとして活躍。その他、地域資源のイノベーションを起こす取り組みとして、琉球びんがた普及伝承コンソーシアムを設立し、事務局長に就任。ブロックチェーンを含む、先進的な技術を如何に地域に根付かせるかをテーマに活動の幅を広げている。
先輩アトツギから家業の変革に向けた挑戦とその裏にある苦労を語ってもらうトークイベント「アトツギこそイノベーターであれin沖縄」が2020年11月15日に開かれた。
ゲストは、株式会社福地組の福地一仁専務取締役と株式会社okicomの小渡晋治常務取締役。前職で培った知見と家業ならではの経営資源、地の利を生かしながら新事業に挑む二人からは、新事業をゆだねる人の発掘こそ重要だとの意見が出た。
<ゲストスピーカー>
【沖縄県】
株式会社福地組 専務取締役
福地 一仁 氏
https://www.fukuchigumi.co.jp/
大学院卒業後、三菱商事にて勤務。入社当初は、中国・韓国向けの半導体設備の海外営業に従事。その後、グループ会社に出向し、不採算拠点の統廃合や本社移転などのプロジェクトを担当。2013年から約5年間、東南アジアのタイに駐在し、国内メーカーとJVを設立。販売から人事・会計マネージャ、調達部長、部品部長などの任務にあたる。タイの地方都市30県以上でビジネスパートナー探しを行い、ディーラー網を構築。また、現地の同業他社のM&Aを行い、PMIなどを経験。2018年8月に同社を退職し、9月から家業である福地組に入社。入社後は、既存事業の強化に注力しつつ、2つの新規プロジェクトを立ち上げて収益化に向けて取り組んでいる。
株式会社okicom 常務取締役
小渡 晋治 氏
大学卒業後、米系証券会社にて勤務。シンガポールでMBAを取得し、2017年に父が創業した株式会社okicomを事業承継する為に沖縄へ戻る。okicomでは、経営陣として企業ブランディング、HR、経営戦略全般を担当している他、既存事業領域外の分野で新しいビジネスを作る新規事業企画部を設立しチームをリード。2018年からは、中小機構にて国際化支援アドバイザーに就任し、県内中小企業の海外展開を踏まえた経営アドバイザーとして活躍。その他、地域資源のイノベーションを起こす取り組みとして、琉球びんがた普及伝承コンソーシアムを設立し、事務局長に就任。ブロックチェーンを含む、先進的な技術を如何に地域に根付かせるかをテーマに活動の幅を広げている。
<モデレーター>
アトツギ総研 所長
奥村 真也
主催:中小企業庁、事業継承ネットワーク全国事務局(野村證券)
運営:一般社団法人ベンチャー型事業承継
大手商社、外資系金融機関から家業へ

福地組は1953年創業の総合建設業の会社です。私の前職、大手商社で勤務し、規模の大きい仕事を任せてもらったり、タイに自分で会社をつくる経験もさせてもらいました。
だんだん経営に対する興味が強くなって、商社で培った経験、ノウハウをどこまで生かせるか挑戦してみたいと思い、2年前に家業に戻りました。戻ってから新規事業を二つ立ち上げて、これをどうやって軌道に乗せていくか奮闘している最中です。

弊社は1980年創業の県内でも古いIT企業で、ソフトの開発・販売、他の会社のソフトの保守メンテナンス、システム、サーバ構築なども手がけています。
私は元外資系の金融マンで、退職後シンガポールにMBA留学をしている最中に父から急に帰ってきてほしいと言われました。それまでは継ごうとは思っていなかったのですが、面白いことへのチャレンジを社是に掲げている会社で挑戦してみるのもいいかなと思い3年前に戻ってきました。入社してからは新規事業企画部を立ち上げて、いくつか仕込んでいる事業が動き出しているところです。

インバウンドバブルで感じた違和感

今、力を入れているのがリノベーション事業です。2018年に戻ってきた当時、沖縄がインバウンドで潤っていた状況に乗じて建設業も調子がよく、こぞって住宅より大きなビル、ホテルへと仕事を広げていました。
ただ、沖縄のマーケットが限られている中でこのバブルは長く続かないと違和感を覚えまして。じゃあ中長期的に考えてこれから何が伸びるかを考えたとき、まだ使える建物を直しながら使う流れが来るだろうと考え、リノベーション事業をやることにしました。



家業の人脈、自分の人脈をフル活用



沖縄に40年も根付いており、80名規模の社員を動かせる会社ってあまりないんです。とくに県外の会社は沖縄で事業を展開するのに営業拠点まで設けるのはリスクが高いので、うちみたいな会社にアプローチして一緒にやりませんかという話は結構頂く機会があります。
そのときに父が築いてきた人脈と、私の金融マン時代、留学時代の人脈もつなげながら事業のタネを見つけていっています。地方独特の地元企業への信頼感は厚いので、取り組んでみたいアイディアを実践に移すハードルは、県外企業が沖縄で挑戦するよりもハードルは低めで取り組ませてもらっています。

あらかじめ使うお金の上限を決めておく

人についてはそこに直面している真っ最中です。事業のネタ探しはぼくがやるんですが、事業は核になるキーマンに任せるやり方をとっているので、人探しに一番エネルギーを使っています。
リノベーション事業については営業だけではなく不動産の仕組み、会計もわからないといけません。プロジェクト回すことのできる人材をまずは社内で探すんですけど、めぼしい人がいない場合は外に探しにいって口説いています。


たとえば飲み会で、会社をもっとこうしたいっていうような意見を積極的に出してくる社員には任せてみようと思いますね。あとは実際に仕事させてみて一緒に仕事をする中で、こちらから振ったことだけでなく、自分でいろいろ考えて準備、推進できる人は素質ありなんで、こういうプロジェクトがあるけどやってみるという声がけはしてみます。
プロジェクトがスタートした後も一緒にかかわりながらも、KPIをしっかり決めて月1で進捗状況をチェックして、気持ちが緩まないよう引き締めています。





妹を引き抜き、新規事業をゆだねる

VUCAの時代って言いますけど、今ぼくがやろうとしているエリアの事業はまさにそれで、あいまいかつすぐに変化して、不確定な問題を取り扱う領域なんです。そういう領域は福地さんがいらっしゃった商社やぼくがいた金融業界出身の人はある程度対応力を持っていると思います。
うちは、既存事業深めながら新しい事業も探求するという両利きの経営に取り組んでおり、既存と新規の両方をきっちり分けているんで、既存事業のリソースを使うことはできません。なので、人材については、外資系金融機関にいた妹を引き抜いて、基本、ぼくと妹を中心に新入社員で育て事業を進めているところです。
事業の育て方で福地さんとの違いがあるとすれば、僕のほうがよりフルハンズオンですね。直近だとローンチしたサービスのSNS運用も自分でやってます。自分で勉強しながらまずやってみないと的確な指示ができないので。それで軌道に乗ってきたらパスする感じです。あとはコラボしている会社の人材を自社社員の気持ちで指導したりもしています。



新規事業のもたらす価値を社内に丁寧に発信




現場は専門家に任せ、経営者としての役割に徹する





既存事業が元気なうちに新規事業の種をまく

専門は専門家に任せるということですね。お二人とも新しいチャレンジをされてからまだ時間がそれほど経っていないわけですが。
視聴者から質問が来てますね。そもそもなぜ新しい事業を始めたんですか、という質問です。


地域に存在していることそのものが価値




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■取材した人
サンディ/アトツギ総研 代表
1983年生まれ。京都大学経済学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。財務経理、経営企画を担当し、全社横断案件やグループ連結決算の開示業務に携わる。在職中に2年間のバンコク駐在を経験。2017年に同社を退職後、シンガポールのNanyang Technological University(南洋理工大学)にてMBAを取得し、2018年9月から2020年12月まで一般社団法人ベンチャー型事業承継事務局長を務めた。現在はアトツギ総研所長を務める他、在シンガポール企業のDirectorとして東南アジアでの事業に携わる。