祭好きな国籍の異なる3人で「祭」をテーマにしたクラフトビール事業をスタート
滋賀県
HINO BREWING株式会社 代表取締役
田中宏明さん
酒屋という家業を継ぎ、新規事業でクラフトビールの醸造を始めた――。そう聞けば、よくある話のようにも思えるが、ヒノブルーイングが面白いのは「全国全世界の『祭』をテーマにした、祭のためのビールづくりを目指している」ということ。「祭」をテーマにビールをつくっている会社は、おそらく全世界でもここだけだろう。
ビール事業に乗り出した背景や、社員であるトム氏とショーン氏との出会い、そして、なぜ「祭」をテーマにしたのかを、江戸時代から続く酒屋「酢屋忠本店」の六代目であり、ヒノブルーイングの代表でもある田中宏明氏に聞いた。
出典:令和2年度中小企業庁/プッシュ型事業承継支援高度化事業/「ロールモデルのクローズアップ」事業「継ギPedia」(http://tsugipedia.com/)
「看板を守ってほしい」という父の言葉で……。
で、僕が17歳の時に父親がガンになって、闘病生活している時に店の看板だけは守ってほしいと。どういう形でもいいから看板だけは守ってくれと。
農業は失敗したが、モノづくりはしたい。
でも、日本酒に特化してるとか、そういうポイントを押さえている店はもうあるんですよね。なので、これは自社商品しかないと思って。ものづくりが好きだし、いつかはメーカーになりたいとも思ってたんで。
経済的なことじゃなくて、モチベーションですね。儲かってるのに楽しくなさそうなお客さんはたくさん見てきました。新規事業をローンチした状態のままアップデートしないで、時代に置いていかれて衰退するという事例も見てたから、何かやっていくのであれば、モチベーション保てて、内発的に何か生み出されるようなコンテンツであるべきかなと思っていました。
トムとショーンとの出会いがクラフトビール事業のきっかけ
で、お祭りの後にトムの家に遊びに行くことになったら、14年日野町に住んでるポーランド人のショーンも一緒に来て、僕が「メーカーになりたい」とかいろいろ話してたら、ショーンが「ビールやったら造れるで」と。
で、お祭りの話になるんですけどね、日野町のお祭りって、各町内にもよりますが、祇園祭の山鉾みたいな曳山やお神輿を凄く少ない軒数で維持管理していて、一軒あたりの負担も重くて、運営するのがいろいろ大変なんですよ。
でも、僕ら3人はお祭りが大好きだし、新しい取り組みで祭りの負担が減ったらみんなも喜んでくれるし、日野町も元気になるし、他所から祭りを見に来て面白いなと思った人が住んでくれるかもしれない。これが上手く機能すれば、他の地域の困っているお祭りの助けになれる可能性もある。だから「ビールを通して祭りを元気にできる会社を作ろう」ってことでスタートしました。
それで、ルールもお金の流れも違うから法人格を分けようと思って資本提携の形で会社つくったんですよ。既存事業の屋台骨に傷をつけなければいいって条件だったんで。
「ビール」は手段で、「お祭り」が軸
お祭りのお手伝いもして、地域の文化の中にうまく入り込んでいけるような会社になっていきたいなと思ってます。そうすることで、地域に必要なビールと会社になれると考えています。お祭りとか文化が軸。地元の継承されていない踊りや音楽もあるので、そういうのを残したりもしたい。
【滋賀】
HINO BREWING株式会社 http://hinobrewing.jp/
代表取締役 田中 宏明 氏
■取材した人
ティム/マスオ型アトツギ
コテコテの理系男子の元ITエンジニアから結婚を機に土建屋アトツギへ華麗なる転身。この選択は正解だったのか...俺たちの戦いはこれからだ!!!