【アトツギソンin青森2021優勝チーム】青森アトツギ、アトツギソンでさらなる覚醒

弘前ドライクリーニング工場
久保 栄一郎 氏
https://www.hirosakidry.co.jp/

全国からお礼が殺到する青森のクリーニング屋さん。大学3年の時に家業を継ぐことを決意。東京での修行時代にコミュニケーションスキルを学び、5年前に帰郷。
家業に入るも、社内の問題山積みな人間関係の前に学んだスキルも全く通じず挫折。暗闇にしか見えない日々を送る。メンターとの出会いをきっかけに、たくさんの人たちに応援され成長。
2019年に子どもができたことをきっかけに「人にも環境にもやさしいクリーニング one more」を立上げ、全国展開。クラウドファンディングでは目標金額の889%となる178万円が集まる。
新聞・TVで取り上げられ、出して頂いた方からメールや電話でわざわざお礼を頂く程好評。アトツギソンin青森以降、工場×教育の事業を企画中。

高橋造花仏壇店
高橋 佳太郎 氏
https://itp.ne.jp/info/029847782000000899/shop/

東京で広告代理店、カメラマンを経て、地元青森で、実家の家業、高橋造花仏壇店に入社。
その後、新規事業をするためのチャレンジをしていくための会社、K Planning株式会社を立ち上げる。
2019年、NYのphotographer事務所と契約するが、コロナ禍と時期が重なり渡米断念。その頃、母から家業の葬儀、生花のホールを建てる計画があるから戻ってこいという連絡を受け、
家族の地元への気持ちに背中を押され家業に入る。青森帰省後、弊社(高橋造花仏壇店)は住んでいる地元への気持ちや、居住する人達を想いながら働いているんだと実感。
高橋造花仏壇店では、地元の人たちのために、より便利で役立つものを作り、他社にはないサービスの実行や、既存サービスを充実させることで、地域に貢献していく。
今後はよりSDGsを意識しつつ、K Planning株式会社では、失敗を恐れず、新規事業にチャレンジしていく方針。

小坂工務店
小坂 翔司 氏
https://kosakagc.co.jp/

就職活動時は東京の企業へ入社するか新卒で家業へ入社するかで悩むが、「地元が好きだ!」という想いから、新卒でのUターン家業入社を決定付ける。
元々大工であった、創業者である祖父が、ゼロから作り上げた想いの詰まっている会社。父である現社長による更なる会社の基盤整備、多角的経営及び社内の組織化、ICT化により進化を続けている小坂工務店。
そんな中入社5年目の小坂さんは、現場監督として工事現場の施工管理の業務を行う。企業理念である『感謝の心』を胸に、会社の目標の一つである「100年続く企業」を目指し日々勉強中。

アトツギはみんなファンタジスタ、チーム内の役割分担で”個”がさらに輝く

《アトツギソンとは》
アトツギが一堂に会し、家業の経営資源を活用した新規事業アイデアを考えるワークショップ型のイベントです。
各自が自分の家業とじっくり向き合える2dayのプログラム。あなたの手で新たなビジネスを創り出す第一歩となります。
そしてこれからもいろんな悩みを相談し合える同世代のアトツギ仲間や先輩がきっと見つかります!

 

ピエール
ピエール
「アトツギソンin青森」で優勝された皆さんに、過去・現在・未来について伺っていき、アトツギソンin青森でのエピソードについても伺っていきたいと思います!まずは簡単に、皆さんが家業を継いだ経緯と現在のお仕事について教えてください。
㈱弘前ドライクリーニング工場の久保です。大学3年の2月に祖父が他界した時、お葬式に行ったら、ものすごくたくさんの方がいらっしゃっていて。弘前で一番大きなホールなのに、人も献花も会場に収まりきらないほどで、圧倒されました。その時に、「これだけの人をつないでいた会社ってなんだろう。なくしてはいけないんじゃないか」という気がしたんです。ずっと以前から、将来は自分にしかできないことをやりたかったのもあって、この会社を続けていくことはまさにそれだと思い、「自分が継ぐ」と伝えました。
現在は、取締役副社長の立場で全体の統括をしています。経験や技術はほかの社員さんのほうが優秀ですが、いま一番欠けているのが部署間の調整なんです。僕が特に力を入れているのは、組織がスムーズに動くように流れを作ること、次の組織を作ること、それから新規事業を作ることです。
久保さん
久保さん
有限会社高橋造花仏壇店の高橋です。僕は大学も就職先も東京のほうだったので、ずっと東京でやっていくつもりで働いていました。ある時、青森の実家から「ホールを建てる、それにはお前に戻ってきてもらわないといけない」と言われまして。「逆に俺が東京で養うから、こっちに来たら」という話もしたのですが、祖父母は地域の人たちと暮らしたかったみたいで、結局僕が戻りました。押しきられた形ですね(笑)。
で、帰ってきてから家業とは別でK・プランニングという会社を作りました。その新会社で銀行から融資を受けるときに、「事業計画書ってこういう感じなんだ」ということも学べたので、とてもいい勉強になりました。東京にいたら分からなかったことを経験できたので、結果として家業に戻ってとても良かったと思っています。今の家業の方では、少人数で葬儀の設営から全体の調整、司会進行までやっていますよ。あとはホール建設についての打ち合わせも重ねています。最近は木材の供給不足と価格高騰という問題もありますから。
高橋さん
高橋さん
㈱小坂工務店の小坂です。僕は仙台の大学を卒業後、他社で修業をせずにそのまま家業に入社しました。東京にあるほかの会社など何社かを受けて迷った末に、「地元が好きだ」と地元に戻ることに決めました。理由はその他にもいくつかありまして、一つは、地元の人、社員の方々、協力会社さん、お客さまなど、地元とのつながりを早くから築きたいと思ったこと。それから、父は多角的に会社を経営していて、僕はそのビジョンを近くで見ていたので、「実際どういう会社なんだろう」と興味もありました。あと、いとこの存在が大きかったです。同世代で似たような境遇のいとこが近くにいるので、お互い気持ちを高め合えたり、大きな心の支えとなっています。
で、いま私は建設部に所属して、現場の施工管理をしています。いわゆる現場監督です。
小坂さん
小坂さん
ピエール
ピエール
では皆さんは、どういうきっかけで今回のアトツギソンに参加されたのですか。

僕はビジネスピッチみたいなものの経験も、新規事業を考えた経験もあんまりなかったのでいい機会だと思って参加しました。あとは、青森にいながら同じような境遇の人と出会えることが「めっちゃいいな」と思って参加した感じです。
久保さん
久保さん
あ、僕もいろいろな業種の方が参加されると聞いて、何かしら刺激があるかも、と参加したんです。アトツギソンのことは9月に行われた『アトツギベンチャートーク@八戸』で聞きました。
小坂さん
小坂さん
僕は、青森県庁の方から案内されて、参加しました!よくわからないけど、ためになるだろう、とりあえず出てみようという感じでした!
高橋さん
高橋さん

ピエール
ピエール
そのような経緯で皆さんそれぞれアトツギソンに参加されたわけですが、いかがでしたか。まず、辛かったことってなんですか。
一日目夜の話し合いですかね。
高橋さん
高橋さん
あの時間が一番きつかったね。
小坂さん
小坂さん
新規事業案のアイデアを21時に会場が閉まった後、23時半までファミレスで粘ったよね。粘ったけど特に進展せずで。でも、このまま続けても何もなさそうだし、もう疲れてるし、みたいな感じで解散したんですが、その後も、みんなもんもんとしてたぶんあまり眠れていなかったと思います。
久保さん
久保さん
でも次の日は朝5時に起きて、そこから続きを。それまで考えてきたアイデアを根本から「変える」「変えない」みたいな話にもなって…。
高橋さん
高橋さん
でも思い浮かばないですよね、あんな短時間で。「もう変える時間もないし」って、変更しないで発表しました。なんか、あの夜は先の光がみえない時間だったよね。思い返せばどうしてあんなに悩んでたんだっけ?
久保さん
久保さん
それこそクリーニング工場を起点にしたビジネス案で、工場に子供の見学を入れる予定だから、現在お子さんを育てている方にアンケートをとったりしたけど、「本当にこれでいいのか?」って話している時間が長かったと思います。
小坂さん
小坂さん
そうだ。最初、ターゲットを2歳とか3歳とかで考えていたから、それが本当にヒットするかどうかがよく分からなかったんです。
久保さん
久保さん

ピエール
ピエール
なるほど、アイデアを深掘りしていって、「これでいいのか」と思いながら夜が更けていき、朝が来て、発表するまでの資料作りなどの段取りを考えると「いまさら変えられるわけがない」という感じですか。二日目の朝、会場に着いた時点では腹は決まっていたんですか。
決まってなかったです。
小坂さん
小坂さん
朝、外で会場が開くのを待っているときに、「もうこれでいこう」という雰囲気になった気はする。
高橋さん
高橋さん
そうだった、朝になったら意外とスッキリしていた感じ。フィットするかどうかは分からなかったけれど、「とりあえずこれでいってみるか」みたいな。
久保さん
久保さん
ピエール
ピエール
今年の8月に行われた大阪府アトツギソンでも、皆さま、土曜から日曜にかけて同じような状況になっていましたね。一番つらいのはそういうところだっておっしゃっていました。

 

アトツギが集まるアトツギU34はこちら

キツくなることは覚悟してたけど(笑)。光の見えてこない時間は本当につらかったです。
久保さん
久保さん
ピエール
ピエール
じゃあ、楽しかったところはどこでしたか。チームで同じアイデアを考えるところとかは楽しかったですか?
いや、大変だったよね(笑)。それにみんな、ぜんぜん違う業種じゃないですか。クリーニング屋に建設会社に葬儀屋さんでアイデアを考えるって、「どうやって?!」って(笑)。
久保さん
久保さん
ピエール
ピエール
業種が違う3人で一緒に取り組むのはけっこうおもしろかったんじゃないですか。

そうですね。今回はクリーニングをテーマにしたので、「クリーニングってこういうふうにしているんだ」とか、いろいろ知ることができておもしろかったというのはあります。他社ならでは、他業種ならではの発見もあったりして勉強になりました。
小坂さん
小坂さん
みんなで話していて僕が思ったのが、それぞれ個が強いということです。みんながみんな後継者としてここまできた人たちで、「全員がロナウジーニョじゃないか、これでまとまることができるのか」って。それも楽しめましたけどね。
高橋さん
高橋さん
ピエール
ピエール
サッカーでいったら全員がゴール前にいる、みたいな(笑)。確かにチームのバランスでいうと完全に悪いですね(笑)。
でも、やっぱり今回チームで取り組んだことで、自分の家業以外のことを考えられたじゃないですか。新規事業の本質はそこにあると思いました。普段「新規事業」っていうと、やっぱり自分リソースありきで考えちゃう。そこから離れて、人の痛みに寄り添って新規事業を考えることができたので、新規事業の本質の部分を一から体験させてもらったと思います。すごくありがたいです。
久保さん
久保さん
ピエール
ピエール
社会課題とかよりも、どうしても家業を起点に考えますもんね。
市の取り組みを見ていても、「いま市には○○があるから、どこそこに持っていったら喜ばれるんじゃないか」っていう自分ありきのスタートだし、僕もそういう発想を当たり前に思っていました。でも、今回出てきたアイデアはこのアトツギソンがなければ出てこなかったと思います。事業を運営する経営者としても新たな目線を得ることができて、一皮むけた気がします。
久保さん
久保さん
一緒に参加していた別のチームも、彼らは彼らでかなりの紆余曲折があったみたいですね。僕たちのチームと同じようにほかのチームも頑張っていた様子が見られたのも、彼らの頑張り抜いた成果を聞けたのも、すごく楽しかったです。思いが詰まっていると感じました。新たな発想もありましたし、勉強になりました。
小坂さん
小坂さん

あと、自分の役割を理解して進めていくほうがみんなやりやすくなる、ということを感じましたね。久保さんはピッチを引っ張ってメインでスピーチをやってくれて、小坂さんがいろいろ考えながらスライドを作ってくれた。じゃあ僕はサポートに回ろう、正確な数字を把握して、審査員の方から難しい質問が来ても返せるようにデータをしっかりしておこう。そう思っていました。やっぱり役割分担というものがすごく大事だと感じました。方向さえ決まってしまえば、みんなロナウジーニョでバーっと進んでいける(笑)。
高橋さん
高橋さん
ピエール
ピエール
でも、本当にみなさんのおっしゃるとおりです。ファシリテータの糸川と、「アトツギソンで一番参加者に学んでもらいたいことは?」って話が出たときに、「新規事業の作り方や考え方みたいなところに集中してほしい」ということになったんですよ。というのも、大阪府のアトツギソンに今年は一人ずつで取り組んでもらったんですが、自分でアンケートを取ってスライドも作って新規事業も考えて、もうみんな頭がパンクしてしまっていたんです。だったら3人で一つのものを作り上げて3人で共有するほうが学べるところも多いのでは、というねらいもあって青森はチーム体制にしました。一人だったらあきらめる人も出てくると思ったし。一人だったら朝5時なんかに絶対起きないじゃないですか(笑)。
確かに。
久保さん
久保さん

 

アトツギU34はこちら

ピエール
ピエール
だから連帯責任制度ですね(笑)。だれもサボれない。今回はチームでやってもらって本当によかったと思いましたよ。じゃあ最後に、皆さんがこれから取り組んでいきたいと考えていることをお聞かせください。長期的な話でもいいですし、目の前の目標でもかまいません。
いまの事業については継続して残していくことが大事だと思っています。プラスアルファでできること、例えばホールを建てるのであれば、ホールの中でいろいろなイベントを開催することもできますし。そうやって地域活性に関わることができたらいいな、とぼんやり思ったりしています。
高橋さん
高橋さん
これから先どんどん中小企業が少なくなっていくことでしょう。そんな時だからこそほかの企業さんとタッグを組むとか、それこそアトツギソンで経験した他業種との地域活性のような”輪”を作っていければいいですよね。お互い足りないところを補填し合って仕事ができたり、その中で新たな発想が生まれたり、ベンチャーにつながったり。ほかの企業さんや人との繋がりを大事にしていければ、どんな時代が来ても生き残っていけるのではないでしょうか。「自分が自分が」ではなくて、「周りとの繋がり」や「新たな発想」を大切にしていきたいと思っています。
小坂さん
小坂さん
僕は、いかに予定調和の未来をぶっ壊すかというところに取り組んでいきたくて。家業を普通にやっていっても、業界も衰退気味だし、予定調和が続いた先の未来がいいものとはぜんぜん思えないんです。そんな未来からいかに脱出するのかを考えて取り組んでいくことって、地域としても会社としても必要なことだと思います。
そういう意味では、このアトツギソンでは「脱出する人ってこうやって考えているんだな」という展望も開けたし、本当によかったと思います。でも、「学んで終わりは意味がない、検証しないアイデアには価値がない」ってさんざん言われたので(笑)、言うだけではなく実際に行動していきたいと思います。
久保さん
久保さん
ピエール
ピエール
皆さんのようなアトツギの方が、会社の名前も背負ってピッチやアトツギソンで人前に立つのはなかなかのことだと思いますよ。僕らはいつも「気軽に出てくださいね」って言いますけど(笑)。だからアトツギソンに参加した時点でもう大きな一歩を踏み出していると思います。でも、小さな一歩からどんどん挑戦していっていただければ、と思いますね。

 

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■取材した人

ピエール

某大手銀行に就職。その経験を活かし、アトツギベンチャーと金融機関の、次世代のあり方を世に問うべく、メディアに取り上げられるような案件をアトツギと実現することが目標。

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