【長編】アトツギベンチャー総決算!アトツギはいかにしてアトツギに“なる”のか?

関西を中心にアトツギベンチャーを黎明期から支えてきた、関西大学梅田キャンパス スタートアップ支援マネージャー「財前英司」氏。一般社団法人ベンチャー型事業承継の顧問も務める財前さんと、一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事 山野千枝が対談!

「アトツギベンチャー」「ベンチャー型事業承継」を始まりから見守ってきた二人が、アトツギの「これまで」と「これから」について語りました。

 

【今回のテーマ】

いかにしてアトツギはアトツギに“なる”のか?

フィードバックがモチベーションにつながる

アクションを起こす場としてのコミュニティ

アトツギに足りない「メタ認知」

■アトツギにある大きな3つの特徴

 

いかにしてアトツギはアトツギに“なる”のか?

 

【山野千枝(イングリッシュネーム:ジル。以下、山野)】ジャスパーは忙しいこともあり、最近はあまりアトツギの世界に顔を出さないけれど、この1、2年、アトツギU34(現:アトツギファースト)の中などでもうっすら観察しているじゃないですか。今日は、そこで思うことをただしゃべってもらう、というイメージです。

 

【財前英司(イングリッシュネーム:ジャスパー。以下、財前)】そうなんですね。記事として大丈夫ですかね?

 

【山野】このあいだは、ずいぶんしゃべっていましたよ。

 

【財前】いやあ、しゃべっていましたっけ(笑)

 

【山野】ほら、公園で踊る人の話…。私はあの話がすごく好きなんです。

 

【財前】 裸男とリーダーシップの話ですね。

 

【山野】そうです、裸男が変な踊りを公園でしていた「ものすごいムーブメントが起こったときの一番偉いヤツは最初に踊りだしたヤツではなくて、、2番目に踊り出したヤツだ」という話です。この社団では、そういうことがすごくあるんです。何もないところにわらわらと集まってくれた人たちが、本当に国の流れにもなっていたりしていました。あの時がなかったら絶対、いまの社団はないんですけれども。

とはいえ、世の中はなんとなくアトツギに注目し始めた、と私は思っているんですけれど、アトツギ本人のほうはどうなんでしょう。アトツギは依然ぼんやりとしてないか、という思いがあるんです。せっかく世の中はアトツギに期待してくれているのに、やはりまだくすぶっているアトツギだらけだし、表に出てこないし、動き出さないし、そういうのはなぜなのだろう、というところに…。

 

【財前】でも、そのあたりの課題の本質は、ジルのほうが現場にいるというか、アトツギと会っているんでわかってんじゃないですかね。僕は最近、起業したい人ばかりで、アトツギの人とは全然会えていないので。

 

【山野】いや、現場にいすぎて分からなくなっている感じはありますね。

私は、アトツギのメタ認知ってすごく大事だと思っています。結局、アトツギは家業に戻って孤軍奮闘していて、社内に話し相手もいないし、客観視できるきっかけもないから、「いったい自分はいま、社長になっていくプロセスのどのあたりを走っているのかな」と思っているんです。一人でやっていると、人と比べることもあまりできないですし。だからサロンを作って、多少そういうこともできる環境が作れればなと。

 

【財前】そうですね。相対的に自分の位置を捉えることはいいことだと思います。

 

【山野】そう、それでやり始めたんですけれど、4周年に向けて、もう少し具体的にメタ認知ができる方法を考えてみたいと思っています。簡単な仕組みのようなものを作りたいとは思っているんです。アトツギベンチャーの活動の初期は、ジャスパーがひとりひとりアトツギと絡んでいたじゃないですか。それで、例えば上田の誠ちゃんやヤナギーは、そこか1,2年でけっこう進化していますよね。なので本日はそのステージの話からしてください。

 

【財前】そのあたりの話ですか。色々あるんですが、当初からのテーマとして持っていたのが、「アトツギは生まれつきアトツギなのか、もしくはアトツギになるのか」みたいなことです。商売をしている家に生まれただけでは、アトツギにならないですよね。例えば、たまたま酒屋の息子として生まれたからアトツギと言えるのか、みたいなことです。形式上はその酒屋の子供だからアトツギでは「ある」んだけれども、アトツギに「なる」ためには別の要素が必要なのではないかとみたいなことはずっと思っていましたね。アトツギとして生まれたけれど、家業を継がない、アトツギにならない人もいるわけですよね。昔だったら職業を選べず、有無を言わず跡を継ぐということはあったと思います。ただ、現代では価値観や働き方も多様化しているし、その家に生まれただけではアトツギにはならないのではないかと思っています。だから、商売している家に生まれたんだけれど、「生まれ=アトツギ」ではないわけですよね。

 

【山野】でも、中には生まれたからアトツギだと思って、自分で思考停止して「アトツギにならなきゃいけない」と思っている人もいる世界ではあるけれど、一方で、跡を継ごうと意思をもって継ぐ、「beアトツギ」の人は、なぜそう思うんでしょうね。

 

【財前】生まれたときから「おまえはうちの跡を継ぐんだよ」と育てられて、周囲もそのように扱って、メンタリティ的にもすっかり後継ぎとして育つ。そして、親が経営している会社を代々継いでいく方は地域にも多くいらっしゃいますよね。そういう人たちは「家業は継ぐもんだ」と思っている。でも、ベンチャー型事業承継を実現している人たちって、もともと「継ごう」とは思っていなかったけれど、戻ってきて継ぐというパターンが、けっこう多いですよね。もちろん、いろいろなパターンがありますけれども。

さっきのメタ認知の話で言うと、外部の視点を持っているというのは、非常に重要だと思うんです。「学校を卒業して、すぐに家業に入りました」だと、自分のことも家業のこともメタ的に捉えることは難しいから、いったん外に出て、就職したり、別のことをすることで、家業を客観的に見ることができる。それから家業に戻ってくるパターンです。そういうのは、どちらかというと、僕が言うアトツギに「なる」というイメージなんですよね。

 

【山野】どこかで「決める」というプロセスがありますよね。

 

【財前】そうそう、決めるプロセスやきっかけみたいな何かが、やはりあるはずだと思うんですよね。もうちょっと今の話をまとめて言うと、アトツギには「なる」ものだと言いましたけど、「生まれ」としてアトツギにはすべからく商売人的遺伝子みたいなものが備わっていると思っています。その遺伝子にいつスイッチが入るのか、いつ発動するのか、というきっかけが、いわゆる家業に戻って来たときの理由によりますよね。僕が、事業承継の文脈で一番魅力に感じているのが、跡を継ぐ動機が「家族やねんから」というところではないかと思っているんですね。例えば、家業の危機があって、家族のためにという気持ちが、個人を超えて遺伝子のスイッチを発動させるといいますか。家族だからという衝動が遺伝子のスイッチを入れるのではないか、と思っていましたね。そこが一番おもしろいし、事業承継の本質なのじゃないでしょうか。

 

【山野】発動するきっかけは、自分の意志よりも、けっこう家族の「オヤジが倒れたから」とか…。あるいは、お父さんが早くに亡くなってお母さんが代打をしているから、早く帰ってあげないといけないなどで、割と家族がきっかけで戻ることを決めるのだけれど、ずっとそれだけがモチベーションだったらもたないですよね。

そこからどうやって自分を出していくか、ですよね。

 

【財前】そこは、やはりなんらかの成果を出すしかないと思うんですよ。だから、僕も当初よく言ってたのが、アトツギには「危機感」や「使命感」はあるのだけれど、一番足りないのは、自分がこうしたいという「意志」じゃないかと。もともと自分がしたいと思っていたわけじゃなかったり、急きょ家族の事情で戻ったり、というケースがありますよね。でも、親が病気でも家業に戻らない人は戻らないですよね。どうしても戻れない理由もある人はいると思います。そして、そのまま廃業してしまうパターンもあるんです。戻るということは、最終的にはそこに家族、家業への想いがあったわけですよね。

 

【山野】ほとんどのアトツギはそうだと思います。

 

【財前】そうですよね。でも、あくまで家業に戻っただけで、別に意志は持っていなかったという状態だと思います。だから、その意志が発動するキッカケは色々ありますが、「今度、新たに作った製品ええやん」と周りからほめられた、などがあると思うんですよね。具体的に言うと、Makuakeで成功したことなどが意志の芽生えになっていくようなものだと思うんですよね。だから、さっきジルが言っていた、「どうすれば自分ごとになるか」というのは、一番いいのは、行動させて、彼らがなんらかのフィードバックなり評価なりを受ける、ということです。

 

【山野】そうですね。まずやってみて、評価がないと始まらないですよね。

 

【財前】これは起業支援の場でも言っていることなんです。起業相談の件数で言えば、この5年間で4,200件ぐらい受けているんです。その相談者や内容のデータを取っていて、起業した人、しなかった人、うまくいった人、いかなかった人、いろいろなパターンがあるので、これも一概には言えないのですけれど、多くは「好き」なことから入ることが多いんですよ。「好き」から入るのはいいし、自分ができることから入る、どんな動機やどんな基準で始めてもいいんですよ。ただ、例えば「私、料理するのがめっちゃ好きやねん。これ作ったし、食べてみて」と誰かに食べてもらった時、「うわ、美味しないわ。」とずっと言われ続けたら、いくら料理が好きでも、ちょっと心が折れますよね。一方で、いつも作っている料理を食べてもらった時、「めっちゃ美味しいやん」と言われ続けたりしたら、別に料理をつくるのが好きでなかったとしても「料理、得意なのかも?」と思うようになってきますよね。みんなから良い評価を受けていくうちに、「料理が好きかも」に変わってくるんです。つまり、「得意」から入ることで「好き」に変わるということです。

 

【山野】確かに。

 

【財前】「好き」から入っていたとしても、「マズっ!」と言われ続けたらそれはどうなるんだろう、という話になるわけじゃないですか。だから、「好き」から入るのは別に悪くないのだけれど、やはり、「得意」から入って、みんなから「いいね」と言われることで、だんだん意志に変わってくる実感があると思うんですよね。

 

【山野】得意から入らなくても、好きじゃなくても、結果を出しているうちに好きになるみたいな…。

 

【財前】そうですね。それを狙えばいいのではと思っています。それで、それができるのがアトツギなんです。

スタートアップで一番大事なことは、最初の顧客を見つけることですよね。例えば、ジルもそうだったと思うけれど、商売を始めた時は最初にお金を出してくれる人を見つけるというのが、本当は一番大事です。でも、「(新設した)株式会社〇〇です」と言っても、最初は誰も知らないわけですよね。まず知ってもらって、最初に「じゃあ、君のとこでちょっとやろうか」と言って始めて、それから「良かったよ、誰か紹介するわ」と言われて、また認知が広まって、となっていくけれど、最初は認知されることと、売るということが、一番大変なわけです。でも、アトツギに関しては、既存事業があるので、それらのリソースは持っているんですよ。すでに知られていて、すでに売り上げが立っているわけでしょう。それがすごくいいんじゃないかと思っているんです。

 

【山野】ジャック(株式会社大都 山田社長)も工具屋の子と結婚して、彼女の家を継ぎましたよね。それで、なにかの取材を受けて、珍しくいいことを言っていたんです。「みんな『好きなことを仕事にする、好きなことを仕事にしたい』と言うけれど、本当に一番幸せなのは、やるべきことを好きになること」というような言い方をしていました。だから、最初は吐くほど嫌だった仕事なんだけれども、彼はいま工具が大好きになっていると思うんですよね。

 

【財前】本当にそうだと思うんです。だから、やるべきこと、目の前のことをやるということが、けっこう重要です。僕は若者と接していますが、やりたいことが分からない、好きなことが分からない人はけっこういますよね。そうではなくて、目の前のことをどれだけ一生懸命やるか。論語に「事を敬して信」という言葉があるんです。自分の目の前のことを敬する、一生懸命やっていると、そのうちに信頼が得られる。簡単に言うとそういう話なんです。目の前のことを一生懸命やることが大事だと思います。それで、その過程でほめられたりすると、「自分はこれでやっていけるかも」「実はめっちゃいいかも」と気づくんです。でも、アトツギって強制的にやらされるから、「好き」ということがないですよね。

 

【山野】最初はないですよね。

 

【財前】ある人もいるかもしれないけれど、ほとんどはない人が多いですよね。家族や家業に感謝を感じているということはありますけれど、別にその事業をやりたかったわけでもないのに、「さあ、やりなさい」といわれてもやはり難しいんです。だからこそ、何か成果を出すことです。なんでもいいと思うんですよ。さっき言ったように、若手のアトツギを見ると、だいたい彼らはプロダクトで成果を出して、なんらかのフィードバックもらったり、「めっちゃいい」って評価受けたりして、そうやって好きになっていくわけですよね。それで、「これは自分の仕事や」ってなると思うんです。そこから大変なこともいっぱいあるだろうとは思いますけれども。さっきのジャックの話も、ほかの人もみんなそうですけれど、最初は別にそんなに好きだったわけではないと思うんです。でも、目の前のことを一生懸命やって、何らかの形にする。     だから、そこを評価する仕組みのようなものを中で作ればいいのではないかと思います。いまは、Makuakeでいろいろやっているじゃないですか。そういう評価される仕組みが必要なのかなと感じますね。

だから、みんながやりたいことを掛け合わせてという方法もあるけれども、そういうことはもう既に誰かがやっていますからね。好きなことは、ほかのみんながすでにやってしまっているんです。それで、何をすればいいかが分からないから、みんな悩んでいるのではないでしょうか。

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【山野】だから私は、アトツギは反復横跳びだと、よく言っているんです。本業と新規事業もそうだし、家業の歴史と未来もそうだし、家族と会社、つまり親が家族でもあり上司でもありというすごく不思議な関係があったりして、それから、自分らしさと家業らしさみたいなところでも、もうずっと、みんな反復横跳びをしているんです。でも、頃合いのいいところが、反復横跳びをしているうちに、何かが見つかるんです。だから、一番よくないのは、じっとしていることですね。

 

【財前】そうですね、だから、何ごともそうなんですけれど、やはり最初から「これだ!」というものは見つからないですよね。最初の年は、やっていく中で誰かに認められるなど、そういう経験がすごく必要だと思うんですね。

 

【山野】よく私たち、ということになるんです。だから、家業のことを知ることです。なんにもやりたいことがないし、モチベーションが上がらないし、だから何もしないというのが、実は一番よくないです。何かやりたいと思っているんだけれど、何もなかったら、とりあえず家業のことを頑張って、そのうちに、だんだんヒントはいっぱい出てくるんですよね。上田の誠ちゃんもまさに、婦人靴製造をすごく頑張っていくうちに、いつのまにかスニーカーを作っていたんですよ。それは、やはりどこかで「うちの資源だったらスニーカーができるかも」と、何かが分かったときがあるのだと思うんですよね。でも、何もないところからいきなり「うちは靴を作っているから、きっとスニーカー作れる」と始めたら、たぶんうまく行っていなかったと思いますね。

 

【財前】いずれにしても、「社員の人たちに認められよう」なども含めて、まずは一生懸命やらないとダメですよね。夢中になりすぎて視野が狭まらないように気を付けて。

 

【山野】そうそう、だからどんどん視点を掘っていくんだけれど、視座がものすごく低くなっていくということになるから、やはりサロンの価値はあると思っています。

 

【財前】視野を広げるとか、新たな視点を得るとか、情報共有できるとか。そういうサロンの価値はありますよね。

 

【山野】でも、経営資源オリエンテッドなのか、自分がやりたいことオリエンテッドで考えるのか、という問題は永遠の課題です。それもまた反復横跳びなんです。最近のデジタルネイティブはみんな賢いから、いろいろなビジネスモデルもすごく研究しているし、鉛筆をなめながら流行りのキーワードを掛け算して、「こんなプラットフォーム、うちのレガシー産業でもできるんじゃないか」など、そういうことをすぐ考えつくんですよ。でも、実感とか手触りみたいなものがなくて、それこそ反復横跳びで、家業のことも一生懸命やりながら、そちらの準備もするんです。でも、みんな昼間はそうとう働いていますよね。

 

【山野】かなり働いていますね。ほんとうに時間はなさそうですよ。それに、ちょうどみんなお父さん、お母さんになっているから、育児もしながら、みんな忙しそうです。

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モチベーションは上げなくていい! まずアクションを起こせ、フィードバックがモチベーションにつながる

 

【財前】「どの切り口から始めるのか」ですよね。色々大変だけれど、それでも「よし、やろう」と思えるのは、「興味や関心がある」ことでなければ難しいですよね。だって、一番強いのは「こうしたい」っていう自分の内発的な欲求ですからね。

ただ、いろいろなパターンがあって、危機感や義務感からもはじめることもあるし、「これが正解」というのはないと思うんです。

あと、自分の「才能」と「強み」を理解しておくことも事業を考える上で大事なことです。すごくわかりやすく言ったら、才能はもともとその人が持っている先天的に得意なことです。それで、「強み」というのは、知識とスキルが合わさったようなものなので、後発的に身につけられるんです。

 

【山野】先天的…。

 

【財前】才能とは、先天的に持っているものですね。例えば、「ジルと話していると落ち着く」「すごく話やすい」「いつも人が見ていないところに気が付くよね」などです。意識していないのに自然とできること、がんばって身に付けたわけじゃないけど、昔から褒められる、みたいなことです。

知識やスキルなどは後発的に身に付けられるんです。それから、強みというのは、相対的に発揮できるかが大事なので、誰に対して発揮するのか、どこで発揮するのか、という話なんです。

 

【山野】なるほど。分かる気がします。

 

【財前】例えば、農業をしているとします。そこで「私は、写真を撮るが得意なんです」と言っても、「そんなの必要ない」みたいになりますよね。農家で強みになることは、シンプルに誰よりも耕せるかどうかですよね(笑)「どこで」強みを生かせるかなんです。「私、TOEIC900点持っているんです」と言っても、「TOEIC?畑にそんなもんいらん!」と(笑)どこで誰に対して、強みを発揮するかが大事なんです。だから、僕は「強みを生かして」と言うんですけれど、それをどこで生かすか、みたいな話です。

 

【山野】どこで強み活かすかを考えるにしても、アトツギの場合は、最初は、基本的にやりたくない仕事だというケースが多いわけでしょう。まれに、「大好き!」と言っている人もいますけれども。「やりたくない」というところから、やりたくなったもん勝ちみたいなことですか?

 

【財前】アトツギの文脈で言うと、それぞれ何かあるけれどバラバラなので、最大公約数として言うのであれば、最初に言ったような、「何らかの成果を出してほめられる」ということが大事かと思います。すでにあるものを活用して、具体的に何かアクションをまずは起こして、それに対しての評価やフィードバックを受けるという経験が一番大事なんだと思います。それが、「あ、なんかおもしろいかも」になるわけですよね。それが積み重なっていくと、さっきの「好き」になっていく、というのはあると思いますよ。そこに行き着くために、まずは入り口というか、「モチベーションなんて上げるのは無理」ですから、価値観などに近いかもしれないけれど、何をドリブンに進んでいくかというところをすごく掘っていくようなことです。

 

【山野】何をドリブンにしているかって分かるんですか?メタ認知できるんですか?

 

【財前】     どんなアトツギでも、何かを作るとか、何かのサービスを出す、世の中に出すというアウトプットをするのが本当に一番いいとは思うんですよ。     Makuakeなどはプロダクトとして表に出るので、一番分かりやすいと思うんです。プロダクト以外にも、アトツギのアウトプット     の仕組みがあればいいのかな、とは思いましたけれどね。

 

【山野】そうなんですよね。でも、Makuakeってやはり、消費財ばかりでしょう。「旋盤で削ってます」や「清掃サービス、ビルメンテやってます」など、いろいろな会社があるんですよ。消費財を扱っている会社は、ほんの少ししかいません。

 

【財前】だから一番いいのは、スタートアップなどもそうなんですけれども、やはりサービスを立ち上げて、もう先に売ってしまうことです。どういうことかって言うと、事業計画を書いて、時間や費用をかけて開発するよりも、かなり粗削りでも作ってみて、とにかく出す。そして、「それ欲しい」と思ってもらう人を探すことなんです。

 

【山野】プロトタイプでいいし、ベータ版でもいいから出してしまうんですね。

 

【財前】ベータ版でも、それをバーッと出して、「それ、すごく欲しい」という人がいれば、初めてそこからじっくり開発に入ったほうがいい、ということなんです。とりあえずサービスを作って、みんなにフィードバックをもらっていくということが、すごく大事だと思うんですよね。

 

【山野千枝】じゃあ、たくさんナレッジを持っている財前さんとして、これをアトツギに置き換えたらどうなるんですか。

 

【財前】アトツギの話で「みんな、なかなか動かない」という文脈で言うと、いろいろなやり方があるけれども、自分の好きなこと、得意なことを分かっていない人がたぶん多いと思うんですよ。そういう意味では、やはり、自分がアクションを起こすことでフィードバックをもらうことが、一番いいかたち、いいやり方だと思いますよね。

 

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アクションを起こす場としてのコミュニティ、そのあり方とは

【山野】そのときに好きじゃなくても、ですね。

 

【財前】好きじゃなくてもいいんです。     家業のリソースを     使っても使わなくてもどっちでもいいと思いますし、やりたいことがあったらやってもいいとは思うんですけれど、やっぱり家業のリソースは有効に活用した方がいいですね

いずれにしろ、なんらかの評価を受けることが大事だと思うんです。何かアクションを起こしたときに、「ええやん!」みたいな評価が必要なんですよ。それが事務局の仕事のひとつでもあると思います。事務局がもっと「ええやん!」みたいなことを言ったほうがいいんじゃないかと思うんです。

さっき、裸男の話が出ましたよね。実はもっと前に同じような話があるんです。僕のすごく好きな話です。最近はムハンマドと言われている、イスラム教の創始者ですね、あの人はもともと商人だったんですが、ある時、洞窟で瞑想をしていたら神に啓示を受けるんです。ここで「神の啓示を受けてん!」と言ったら、完全にやばい人ですよね。でも一番最初のフォロワーの彼の奥さんが、「ウチ、アンタのこと信じる」と言ったから、イスラム教が始まったんです。旦那さんが家に帰ってきて、「うわー!神の啓示が降りてきたー!」って言ったんですよ。

 

【山野】奥さんは、「マジで?! すごいやん!」と言ったらいいんですね。

 

【財前】そうです。「いける!それ、もうやるべきやわ」とかですね。奥さんがそう言ったから、そこからムハンマドは、「これは、みんなに言わなアカン」ということで布教を始めたんですよ。本当にイスラム教のはじまりって、こうなんです。

だからまず、発露したことに対して、事務局からフィードバックを受けられたり、「もっとこうしてみたらいいんじゃないの」というようなことを言ってもらえたり、そういうことができたらいいと思うんです。事務局でなくてもいいんです、ほかの誰かなのかは分からないんですけれど。さっきも言ったように、作る前に「売れる」ということが分かるのが一番いいわけですよね。散々お金かけて、開発して、     「さあ、売る」みたいな。Makuakeもそういうことが分かるプラットフォームです。ただMakuakeで気を付けておかないとダメなのは、興味・関心で買ってくれる人がいるので、いざローンチしたら全然売れなかった、というパターンもけっこうあるんです。ニーズを探るという違う目的で利用するのであればいいんですけれど。興味本位で買う人や物珍しさで買う人もいるので、そこで「市場にはニーズがある」と思って出してしまうと、売れないパターンもあったりするんです。

 

【山野】本当に、単純に応援したくて、買ったという人も多いですもんね。友達が頑張っているから買う、みたいなことです。

 

【財前】そうですね。それはイコール売れる、ということではないとは思うんです。気をつけないとダメなところではあると思います。いずれにしろ、Makuakeのような外部の評価を受けるでもいいし、いまはそういうコミュニティができているのだから、コミュニティの中でなんらかの評価を受けるということはやったほうがいいと思います。やはり表に出さないとダメです。何かを表に出していくことをやらないと、単に情報収集をしているだけでは何も変わらないじゃないですか。現実は何も変わらないですから、何か発露して、良くも悪くも、評価を受けるということがすごく大事なわけですよね。その時に、評価する側はダメ出しはいくらでもできるけれど、出した方にとっては「いいやん」と言ってくれることが必要だと思います。いい部分は絶対あるんです。

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【山野】ある意味、美しいというか、ほほえましいと思っているのが、アトツギにはMakuakeに挑戦する人がすごく多いんですけれども、みんなお互い応援し合って、みんなで買い合っていますよね。それこそテストマーケティングになっていないからあまりよくないじゃないですか。でも、会社では誰も理解もしてくれない中で、一人でMakuakeをやっているのは、基本的にはみんな一緒なんです。「結果を出して社内で認められなきゃいけない」というのは、みんな同じ状況だから、お互い売り上げにも貢献するというのが、すごくいいですね。

 

 

【財前】     何らかのきっかけというか、ちょっと下駄をはかせてもらっているとしても、本人にとっても、会社内においても、「それだけ評価されたんだ」という成功体験になるわけですよね。社長に見せるためにそういうことをやって、「ほら、こんなに何百人も支援してくれたよ」と、アリバイのため、見せるために、みんなに「協力してくれ」ということはあり得ると思っています。そういう使い方もあると思いますし、やはり、まず何よりも、本人がそこで「これはいける」、「これをやりたい」という気持ちになるためには、なんらかのいい評価なりフィードバックなりをもらえたほうがいいわけですよね。誰にも評価されないと、それが果たしていいのかどうかもわかりません。そもそものメンタリティとして、やはり評価を受けるというのは怖いとは思うんです。クラウドファンディングをやって誰も集まらなかったらどうしよう、と思ってしまうわけです。それは怖いけれど、そこを乗り越えたら意外といけたということがあります。

 

【山野】でもMakuake挑戦を始め、新規事業ってハードルが高いと感じる人がサロンでも多く、辞めていく人の中には、まだ家業の中で動ける状況じゃなくて、みんながぐいぐいやっているのを見て、「しんどい」と感じて「いったん辞めます」となったりするんですよね。

 

【財前】その人なりのタイミングはありますからね。あとサロンでいうと、単純に情報収集をしたい人がいますよね。裏話的なものとか。

つまりそては、「具体的にどうやっているんだ」というような話ですね。まあ、「なかなか入りづらいです」と言う人に、「もっと積極的に絡んできなよ」とか「自分の意思で入っているんだから」といった自己責任論だけで話をするのもあまりよくないですよね。そのあたりはオープンにしてあげて、みんなが入ってきやすいように…。でもそのあたりの実際のところは分からないです。だから「サロンの利用者はどう思っているのだろうか」と思っています。

 

【山野】家業に入って必死でやっている中で、新規事業というのが重たい、と思っている人も多いと思います。

 

【財前】目の前のことに加えて、これからのことを両立するのは大変なことで、難しいと思うんですよね。

 

【山野】中には、既存事業自体がまだそんなに枯れていないところもあるけれど、みんな、「えっ、新規事業やらなあかんのかな、でも何したらいいんやろう」みたいな気持ち悪さがあるのだろうと思います。それと、「新規事業というのに捕らわれすぎていました」というようなことを言う人も、たまにいますね。

 

【財前】目の前の仕事もあるし、新規事業は将来のことであって喫緊の問題ではないでしょう?「将来こうなるで」と言われても、そんなことは考えられないですよね。将来のことを安く見積もるのは、僕らもみんなそうですよね。「将来、年金は破綻すんで」なんて言われても、頭では理解できるけど、実感としてはないわけじゃないですか。将来の不安をどうしても安く見積もってしまうので、目の前のことに集中することになってしまうと思うんですよ。だから、ベンチャー型事業承継って、そういうギアを変えないといけないというか、入れているソフト、なんだったらOSも変えないとダメだと思うんです。そのためには、ずっと現在の線形上でやっていたら無理ですよね。現在の延長線をまっすぐ行っているだけでは新しいことはできない。だから、こういうサロンみたいな場所に来て、先輩アトツギのやり方を共有してもらったり、考え方を身につけていれば、いざ「やる」となったときには、その一歩が踏み出せるようになる。家業に従事しているだけでは、そう思えることは難しいので、こういうサロンや先輩アトツギに会えるような「環境」に身を置くことが大事だと思います。

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「お金が欲しい!」と思う人ほど、いまのお財布にいくら入っているかを理解していない

 

【山野】ベンチャー型事業承継は、4周年に向けて、このたびいろいろ明文化しているんです。それで、新規事業だけではないということをきちんと書いています。それこそ、組織を見直すことや生産工程を見直すことも、市場を見直すのだって、シュンペーターさんが言っている5類型をそのまま全部見直すこと、プロセスすべてがベンチャー型事業承継だと言っています。そのうちのあとの全部が新規事業なんだけど、周りを見ていたら、やはり目の前のことを何とかしたいんですね。家業に戻ったら、超アナログな現場にがくぜんとして、まずはDXだ、となった人のほうが大多数ですから。だから、まずはそういうことから取り組んで、要件定義などを作っているうちに家業のこともすごく分かるようになって、なんなら親父さんよりも定量的にデータで説得できるとなりますよね。

 

【財前】そういったことからもコストが下がったり、売り上げが上がるとかもあるので、まずは家業の現状を把握して、改善からやっていくっていうのが大事です。

 

【山野】改善からやっていったら、実はおもしろいビジネスを思いつく、みたいなケースは多いです。だから、そのプロセスの中でも、どこかで新しいことを考えようという頭をちゃんと残しておけば…。

 

【財前】そのプロセス自体が家業を知ることになるわけですよね。そういう点においては、やはり家業の「現状」を知ることが大事ですよね。そのための方法として、わかりやすいのはいわゆるギャップ分析みたいなものが良いんじゃないかと思います。通常は、何か「こうなりたい」みたいな理想を決めて、そこから、そうなるためには「現状」を知って、その理想と現状との差分が、いわゆる課題ということなんです。例えば、「やせたい」とか「お金持ちになりたい」と言っている人は、ほとんどが、いま自分が何キロかも知らないし、自分がいくら持っているかも知らないんですよ。「金持ちになりたい」と言っているのに、「いまいくら持ってるの?」と聞かれても、財布の中にいくら入っているのかという「自分の現状」を知らないことが多いです。

【山野】メタ認知ができていないんですね。

 

【財前】現状を正しく把握できていないんです。それで、これをやることで現状を把握するので、ビジョンとの差分が出るという感じなんですけれどね。だから、差分出すためには、やはりビジョンを決めないとダメなんですけれど、ここが決まらないまま、決めないまま進んでいたりしますよね。アトツギのいまの話の流れで言ったら、先に「こうやりたい」や「なにか新規事業を」などと言っていて、「いや、それで現状はどうなってるの」ということが正しく把握されていないところがありますね。

 

【山野】確かに。

 

【財前】「こうやりたい」と言っている人に足りないのは、正しい現状分析だと思うんです。     家業のことを正しく把握していないというようなことは、けっこうあるかと思いますね。

【山野】そういう意味では、私は、DXのこの波はすごくいいと思っています。サイボウズが「アトツギカイギ」と言い出しているのも、やっていることは、すごく正しい戦略だと思います。

 

【山野】財前さんは、起業する方にそうやってお話をして、それでその人たちの理想というか、to beのところを話して決めてもらうという話をされているのかなと思うのですが、目標の決め方ってあるんですか。

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【財前】ちょっと話が長くなるのですが、そもそも論的なところへ立ち返るようにしてます。究極のところ、人間は「なんのために生きているの?」と言われたら、人それぞれではあるとは思いますが、抽象的にあげていくと、最終的には「幸せになる」という、そこに集約されると思います。これまでは分かりやすい最終的な幸せの形があったけれども、みんな一緒の幸せってもはや崩壊したと思うんです。これからいろいろなことがうごめいていくのに、明確な問題設定がなくなっているんですよ。

そうなると、必然的に自分がどうしたいか、自分を規定しかないといけなくなります。そこでは、自分がどうしたいかということを規定しないとダメだと思うんですよね。この考えについては、一般の人以上にアトツギには考えてほしいところです。家業に戻って来た理由はいろいろあるはずです。でも、たぶんその人にとって、やはり家族みたいなところがけっこう優先順位が高いのだと思うんです。だからまず、分かっていると思うんですけれど、家族の幸せや家族と一緒にいること、家族が代々やってきたことを自分で途絶えさせたくないという思いが価値観としてすごく大事なものとしてあるはずです。現状を知るという意味ではそうだし、その上で自分はどうなっていきたのか、ということです。

 

【山野】マイルストーンみたいな。

 

【財前】はい。マイルストーンとしての目標もあると思うんですよ。最終ゴール     ではなくて、マイルストーンとしての目標です。幸せになるためには、まずは結婚なのかもしれないし、まずはお金を稼ぐことなのかもしれないし、いろいろと人それぞれあっていいと思うけれど、前提として自分はどうなりたいかというところを規定して、その上でそのために必要な目標を設定することは、すごく大事にしていますね。

起業の話で言えば、これを決めないまま起業しても、     もちろんできるし、やっていけるんですが、よく分からなくなってきたときや、うまくいかなくなってきたときに、「自分はなぜこれやっているのだろう」というふうになると思うんですよね。「こんなにしんどい思いして何をやっているんだろう…」と思うんです。そこで社員がいたら、     辞めようにも辞められないし、とりあえず社員を食べさせるために、営業に行って、仕事を受けてきて…。

 

【山野】ライスワークですね。

 

【財前】食べさせるためだけに、となったら、もう、自分が何をやっているのか分からなくなるかもしれないですよね。そのためばかりになったら、ライスワークのために仕事や起業しているだけになってしまっています。もちろん、その側面も大事なんです。でも、そうなったときに、やはり決めておいたほうがいいゴールがあって、その     中で目標が決まっていくのではないかと思います。そういうことが、すごくあるかと思います。だから、いま決めなくてもいいけれど、最終的には必要になってくるし、やっている中で自分というものが分かってきます。

でも、自分のことだけを考えることってないですよね。だから、これからもっと必要になってくるのではないかと思うんですね。今の社会も自分も「どうしたいんだ」とずっとゆらいでいますから。いままでは考えてこなくてもよかった社会だったと思うんです。

【山野】もういまは本当に、いろいろなものがすごく多様化していますよね。いままではアトツギの王道って、どこかのメガバンクにいったん就職して、30才ぐらいで戻ってきて家業を継いで、一生懸命頑張って事業承継をそのうちやってみてみたいな感じでしたよね。

 

【財前】まずは銀行に就職して、みたいな流れがありましたね。

 

【山野】でも、もうそれが「違うよね」ということになっていますよね。東京で応援しながら、岩手で、実家の家業、EC通販もやっているアトツギムスメがいたりします。兼業や副業もできるようになっているから、地方で少し働きながら、片足で家業を少しやりながら、と楽しそうにやっているし、昔はNGと言われていたことが許されるからこそ、「どうしたいか」を自分で決めないといけないんですよね。いまは何でもできるようになっていますから。

 

【財前】だからこそみんな迷ってしまうところもありますよね。

 

【山野】そう、選択肢がありすぎるんです。

 

【財前】難しいかもしれないけど、まずは決めないことにはダメなんです。決めるというのは「何を大事にするか」という軸を持つことです。あれもこれも選択肢があるから、いろいろ迷う。それに、アトツギは優秀な人も多いから、色々できちゃうし、器用貧乏みたいになってしまうんです。そうならないためには、もう決めちゃうのがいいということです。まあ、決めるというのは、やりたいことを決めるだけじゃなくて、やらないことを決めるというのも一つだと思うんですよ。「みんなが良いと言ってるけど、私はやらない」、「流行っているけれどやらない」、そういうことを決めるというのが、すごく大事だと思うんですよね。

 

【山野】そうですよね。以前は、王道みたいなパターンに入って、そのうち業界団体に入って、銀行の後継者塾に行ってなど、アトツギの世界にある程度レールがありました。新規事業なんて誰も言わなくて、「本業を頑張れ」というような世界だったんだけれど、いまは、国も「新規事業をやれ」と言い出したり、会社以外のところであおられたりするので、もう言い訳できないですよね。昔はそんなチャンスをくれる人もいないから、家業で頑張っていくしかなくて、「これが私の結論です、私の目標です、なぜなら私にはこの道しかないから」って言えたんですけれどね。でもいまは、なんでもできるようになっているから、いろいろなかたちの継ぎ方があって、だから、自分の意志がすごく…。

 

【財前】「自由からの逃走」という本があるんです。「自由にしていいよ」と言われたら、逆にみんなどうしたらいいかわかならくなって、不安になる。人は帰属したい欲求も強いから、自由を得たにしても、逆にその自由から逃げたくなってしまうみたいな内容です。アトツギもたくさん選択肢があって、なんでもできる状態になると、逆に誰かに決めて欲しくなっちゃうことはあるでしょうね。

 

【山野】でも、すぐに決めなくていいと思いますよ。いったん決めて、決まっていたことが変わっていいと私は思うんですよ。

 

【財前】そうですね、軸が変わらなければピボットすればいいですからね。「家業の進むべき方向や目標」を決めないことには、「現状」との差分が出せないので、「何が足りないんだ」ということがわからないですよね。自分はこれがやってみたいなと思ったときに、現実とのギャップがありますよね。これが問題や課題と言われるものなので、「自分が働きやすい、みんながしゃべりやすい職場がいい」とか、思うじゃないですか。その改善でもなんでもいいんです。それが決まって、「じゃあ、いまのうちの会社って、日常会話も全然ないし、だからそのためにはまず朝礼かな」、もしくは、「机の席替えかな」など、いろいろありますよね。じゃあ、まずは朝礼から始めようとか、そのうち、ちょっと机を変えてみようとか、そういうことです。

 

【山野】それはアクションですよね。アクションしていかないと、目標も見えてこないですよね。

 

【財前】そうですね。小さいアクションで良いから何かやってみること。動くことの積み重ねから、「こうしたい」が見えてくることはあります。もしくは、どんな小さいことでも良いから、家業の中で自分が「こうしたい」みたいなところがあった方が良いと思います。そんなに大きい話ではないんです、新規事業でなくてもいい、「まずは社員と仲良くなる」でもいいわけです。もっと社員とコミュニケーションを取りたい、話せるようにしたい、もしくはアイディアを言い合える機会がほしいとか、なんでもいいので、決めることで、現状との差分が出てくるんですよね。それで、それをやっていくということです。だから、「何かはあるだろう」というふうに思います。

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【山野】それは、絶対何かはありますよね。

 

【財前】「何も疑問に思うことはないです」とか「何も変えたいことはないです」とか、そんな人はいないでしょう?

 

【山野】すべて満たされて。

 

【財前】新規事業とかではなくても、家業で「何か不満なところとか不具合はないの?」みたいな、もっとこうなりたいなどがあれば、そこをやるということが一つあると思うんですよね。例えば、あまりコミュニケーションがとれていない、と一つ決めて、じゃあ、いまは朝礼がないなとか、みんなでランチを食べていないなぁとか、そういうことをやろうと決めてやってみる。そうしたら、「本当はみんなでこうやってランチ食べたかったんです」とか言われて、「えっ、そうなの?」みたいになるんです。

 

【山野】なるといいですね。

 

【財前】逆に「実は、こういうことじゃないんですよね」というふうに言われること自体も学びになると思うんです。「こうやって一緒にランチを食べるとかではないんです」と言われれば、「あ、そうなんだ」と気づくわけですよね。

 

【山野】行動して、またそれが…。

 

【財前】良くも悪くもフィードバックをもらえますからね。「ここが不満だから、これをやろう」とするけれど、現状は誰もそれを求めていなかったりするかもしれないですよ。「それは現状ですでにやっている」ということもあるかもしれないですよね。だから、現状を把握していないことで、うまく差分が出ていないところだろうと思います。

 

【山野】でも本当はいろいろな意味で、目標を決めるのも、さっきの話の「現在地を知る」ことというか…。

 

【財前】現在地を知るのは嫌な現実にも目を向けないといけないので、なかなかできないことはわかるんですけどね。

 

【山野】そこは、目をそむけずに現在地を知るというか、何を分かっていなくて、何を知っているのか、とかですね。

 

【財前】     毎日体重計に乗っている人は、ちゃんと管理できているんですよね。そういう人は「今、自分が何キロか」を知っています。     例えば、自分の適正体重が70キロだとしたら、「ちょっと昨日食べすぎだな」と、ちゃんと70キロに戻るようにするんですよ。ちゃんと毎日計測していて、「71キロになっちゃった、じゃあ、ちょっと今日の晩ご飯は少なめにしようかな」というふうに調整できるわけですよね。でも、正しく把握してないと、気づいたら5キロも太っていたことになるわけです。経営において、資金繰り表などを毎日見る必要があるのと同じようなことです。

 

【山野】アトツギの人たちは、事業承継までのプロセスで、10年ぐらいの間にいろいろとステージが変わるんです。それで、サロンは、もう最初の入り口でキャッチボールをやったり素振りをやったりと、わいわいやっているだけなんだけれど、彼らが実践に入っていくところで個別の課題が出てくるんです。私が次にやりたいのは、事業承継するまでのプロセスで、アトツギの人たちが現在地を知る、メタ認知ができる仕組みを作りたいんですよ。自分はいまどこに居るのか、「このプロセスは、いまここのへんにいる」というのが分かる指標を作ろうと思っています。

 

【財前】いま、自分がどこにいるかを知るというのは、すごく大事ですよね。

 

【山野】これは使命です。

 

財前】アトツギの特徴は3つあると思っています。僕はスタートアップやスモールビジネスのことも少しやっているから思うのですが、一つめは、すでにリソースを持っているところだと思うんです。断然、有利なんです。例えば、立ち上げたばかりの企業が「千年治商店です」と言っても、最初は誰も知らないわけですよ。そこから知ってもらって、売り上げをあげるというのは本当に大変だと思うんですよ。でも、家業があるというのは、すでに知ってもらっているんですよ。それで、リソースもあるので、基盤があるじゃないですか。そこはもう断然有利なところですよね。それがアトツギの最初のメリットだから、いい意味で下駄をはかせてもらっているんです。しかも、既存の家業は仕組みとしてでき上がっているから、すごく色々と学べるんですよ。

それで二つめは、これも当初から言っている通り、イノベーションを起こす動機です。新結合だとか、プロセスイノベーションを含めて、いろいろなイノベーションのやり方があると言っていましたけれど、個人の「やりたい」とか「何かを実現したい」ということを超えて、「家族のため」だとか、「子どもに何か残したい」などの想いがイノベーションを起こすための動機の源泉なんです。こういうことも実はシュンペーターが言っているんですよね。自分への効用だけを考えていたらイノベーションはなかなか起きないから、「家族のため」という、個人を超えたことがイノベーションを起こしてきて、資本主義を発展させてきたということを言っているんです。そこが、すごく腑に落ちたといいますか。自分のためだけではなく、誰かのため、しかもそれが家族のためという動議が一番強いイノベーションを起こすための源泉になるし、それができるのがアトツギです。

いわゆるファミリービジネスがいろいろな荒波にもまれても継続できたきたのは、新商品や新規事業だけではなく、それこそ子孫に財産を残したい想いみたいなことだと思います。三つめは、やはり中長期的に事業に取り組めるということですね。

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【山野】それは本当に最大の価値ですね。

 

【財前】もう新規事業でも新たな取り組みをはじめる時でも世の中の視点も短期的じゃないですか。「すぐにやって、すぐに成果を出せ」「すぐに売り上げるにはどうしたらいいですか」など、短期かつ近視眼的です。かつ、かなりサイクルが早くなってきているかと思います。その中で、中長期的に捉える視点というのは、アトツギならではですね。ベンチャー企業は短期間で「一気にスケールする」という事業体なんです。それはそれで良いと思うんですけれど、やはり、家業やアトツギでやっていることは、中長期的に捉えられるじゃないですか。それが同族経営の、たぶん、ある種のメリットだと思うんです。また、同族だけにとらわれずに、いま、いろいろな事業承継の施策の中で、第三者承継などもやっているのは、すごくいいことだと思うんですよ。ただ、この事業を継続させてたいという動機で言えば、同族にかなうものはないのではないか、とは思うんです。だからファミリービジネスって強いんですよね。

 

今、お話したようなことが、もともと事業承継に興味を持ったきっかけです。やはりベンチャーってけっこう大変なんです。何もないところから、個人の衝動や思いで動いていくわけでしょう。そこに共感してみんなが集まってくるというのはいいのだけれど、そこにない何かがファミリービジネスにはあって、事業の動機が全然違うんです。あとは、義理人情浪花節的な、いわゆるストーリーというか、ナラティブと言ったほうが近いですね。ストーリーは「どっかの誰かの話」なんですけれど、ナラティブというのは、「個人的な話」です。それぞれの家にそれぞれのナラティブがあって、それがまた違うし、ドラマがある。家業によって、それぞれ全然違いますよね。だけど、それぞれの思いというのは共通したものなんです、その想いに触れて感化された僕がアトツギにすごく関心を持ったときに、「私、洞窟でお告げされて」って出てきたのが、ジルです(笑)

 

【山野】「ええやん!」と言ったんですね。

 

【財前】最初に言ったのは僕ではないですけれど、「私、お告げを受けてん!アトツギが日本を救うと思う!」と洞窟から出てきたジルに「それ信じるわ。」と言ったうちの一人が僕だったということです(笑)

 

一般社団法人ベンチャー型事業承継 顧問一覧

 

多様性の社会をさまようアトツギたちへ― 1人との出会いの影響が、自分のいる場所・進むべき先を照らしてくれる

 

【山野】今日の私は、要するに、やはり原点回帰というか、そういう意味もあるんです。いま、「どこに向かうねん」みたいなタイミングだから。

 

【財前】そうですよね。ベンチャー型事業承継として、第二創業といいいますか、やってきたことを具体的な成果とししっかり見せていきつつ、さらに広く多くのアトツギに広げていく必要がありますね。

 

【山野】だから、カタカナアトツギでも名乗っているTwitter界隈の人が増えたなあと思っています。

 

【財前】そうですね。カタカナのアトツギには、ニュアンスがいろいろあると思うんですよ。どういう意味合いで使っているのか、大して意味なく使っているということもあると思うんですけれど、新しいことをしていくみたいな、そのニュアンスはありますよね。皆さんも、従来の価値観じゃなくて新しいことをやっていく、新たな価値観でやっていくみたいなところはすごく感じているんじゃないですかね。だから、漢字の「後継ぎ」じゃなくて、カタカナが馴染むんだと思います。

 

【山野】自ら名乗るということが、すでにすごいですね。

 

【財前】     そこが     アイデンティティみたいなことなんです。だから、さっきの「自分を知る」みたいなところで、こういうのはマッチしてくると思うんですよね。けっこう多様になってきているから。だから、昔は、自分がアトツギだったら、社長って呼ばれるのが嫌だとか、ありましたよね。「後継ぎであることをあんまり言わない」みたいなことがあったけれど、いまは多様化してきていますから。まだまだ、過渡期だとは思うので、いろいろ言われることもあるかもしれないけれど、でも、アトツギということ自体が、多様性の一つぐらいに捉えられてきていると思います。だから、国籍の問題も、もっと地方に行ったりしたら分からないけれど、いまはもう、ハーフの子とか、けっこうオープンになりつつありますよね。まだ過渡期だし、まだそれが置き換わったかというと、そうではないけれども、その文脈の一つになってきているのではないかとは思います。

 

【山野】隠している子、みたいな雰囲気はなくなってきましたね。

 

【財前】どちらかというと、「じゃあ自分はどうするんだ」という部分にフォーカスがあたりつつありますね。

 

【山野】そうですよね。

 

【財前】家が商売をやっていて、継ぐか継がないかは分からないけれど、それを踏まえたときに自分はどうしたいんだ、というところになってきています。

 

【山野】ある意味、アトツギに追い風というよりも、決めさせられる局面、環境になっているということですよね。

 

【財前】そうですね、社会がそうなってきているから…。

 

【山野】いろいろな選択肢があるけれど、「どうする?」って言われている…。

 

【財前】いまって親子の距離も近くなってきているから、親がやっているんだったら、「自分も何かやるんだろうな」というぐらいに、もしかしたら、いまの中高生はどちらかというとポジティブに捉えているかもしれないですね。学校教育においても、けっこう早い段階からキャリアのことを言われたりもしていますから。だから、アトツギだけに限らず、キャリアという意味で、大きい流れとして、自分はどうしたいのかを考える機会は増えていると思うんですね。それに親も別に無理に継がそうとは思っていないですよね。

 

【山野】思っていないですね。

 

【財前】「あんたが好きなことをやりなさい」と言ってる中で、でも子供がいつ「継ぎたい」と言ってきてもいいように、もちろん準備はしている、というところですね。

 

【山野】財前さんの、一番最初のいますごく活躍しているアトツギが、まだ何者でもなかった時期に、彼らが成長や、変化をとげた姿をどう見ているのかお聞きしたいんです。

 

【財前】それは、僕は何もしていないので、本当にこういうことをお話しするのは僭越ですけれども、やはり彼らの成長は動き続けていたからではないかと思います。

 

【山野】そこですよね。

 

【財前】僕は、いろいろとやっていたわけではないんです。まず勉強会で自分が経験して使えるようなナレッジを共有したりして、そこでアトツギの方々とつながったんです。結局、人って環境に規定されるわけですよね。その環境や付き合っている人、誰といるかというところに影響を受けるわけです。例えば、「市内大会で勝でばいい」というチームにいるのか、「毎年全国大会に出よう」というチームにいるのかでは全然違うと思います。だから行動することで、それがいわゆる視座が上がるということになると思うのだけれど、最初は「市内大会で勝つ」ぐらいに思っていたのが、そういう人たちといろいろ会うことで、自分の視座が上がっていって、周囲から「えっ、まだやってないの?」みたいな感じを受けて、やっていない自分がもはや少しアウェイ感に感じるということにはなってきたと思うんですね。そういうことが何回かあって、講座などに参加した人が少しずつ小さなアクションを起こしていったと思います。その要因はアトツギの講座やイベントなどを通じて、「人に会って、感化された」ということだと思うんですよね。行動の結果はいろいろで、それがうまくいった人、うまくいかない人がいます。ただ、とにかく行動したからこそ学びがあったと思うし、成果に繋がったこともあるけど、それはあくまで結果なんですよ。でも、少なくとも、いま、成長していて結果が出ている人は、自分でそういう環境に身を置くことによって、人とつながることで人によって影響を受けたわけですよね。それで自分を客観的に見つめられたということもあるだろうし、シンプルに人から教えてもらったこともあるだろうし。その違いは大きいとは思いますよね。

ビジネスモデルを知っても何も変わらないんです。知識は今やどこでも得られるじゃないですか。一番はやはり、人にインスパイアされること。それは何にも代替できない。だから、みんな四の五の言わず、ジャックに会いに行ったらいいのになと思います(笑)

 

【山野】会ってくれますしね。

 

【財前】そうなんです。何かを教えてくれるとか、そういう興味の話ではなくて、まず一つ、その人の「たたずまい」というのがあります。彼らは仕事じゃないので、「ただのお酒飲んでるオッサンやな」と思うのかもしれないれども、やはり彼らと経営の話になったときには、修羅場をくぐりぬけている厚みがある。そのたたずまいや言葉に直接触れることができるのが、オフラインのいいところですね。よく分からないけれど、彼らの覚悟みたいなもの。そこに触れているということが大事なんですよ。

これも少し深い話に入ると、「なんだかよく分からないけれど、この人は一見うさんくさそうには見えるけれど、もしかしたらすごいんじゃないか」、もしくは逆に、外資系だとか、キラキラしたところにいて「すごそうな人だけれど、なんだかうさんくさい」ということがあると思います。ある種、それを判断できるというのは、知識の問題じゃないんですよ。うさんくささとか、もしくは、なんだか分からないけれど、何かそこに…「おわします」みたいなことを感じるんです。いわゆる「かたじけなさに涙出る」ですね。西行が詠んでいるんです。「何ごとのおわしますかは知らねども」みたいなことです。つまり、言葉にならないものを感じることです。そういう句があったと思うんですよ。

でも、それを感じることができるのは、ある種の教養的なものもあるんです。だから、「なんだかよく分からないけれど、うさんくさい」とか「なんだかよく分からないけれど、信用できる」ということ、もしくは、「どっちに行ったらいいのか」、「どっちを選んだいいのか」など、答えがないときに威力を発揮するのは教養というか、センスと言われているところだと思うんです。そういうときに選べるというのは、自分で言語化できるかどうかは別にしても、直感と言うか、知識じゃないところなんです。それはやはり、経験によって培われたりとか、いろいろないわゆる知識のレンジが広くなって、それらをつなぎ合わせたりしながら判断する、みたいなところになってくると思うんです。よく分からないことを判断できるためには、いろいろな人に会うというのが非常に大事だと思うんです。逆に、それ以外の方法では身に付けられなかったりしますから。ある種の感性や、知覚することなどについて、前も、スループットみたいな話をしたでしょう。インプットしてアウトプットする間には、そこで演算処理したり、考えたり認知したりする間がないとダメなので、だからそこに関しては、いろいろな人に会ったりして、いろいろな知識からなんとなく判断していくみたいなことになります。ロジカルな判断だけでは限界がある。

例えば、お医者さんの場合、「さあ、この2人、どっちも危ない状態にあるとき、どっちを治療するの!?」みたいなことを、お医者さんは求められるわけなんですよね。「さぁ、どうするの?」ということです。こういう、「それはもう理屈じゃない」というようなことってあると思うんです。「どっちを選ぶのか?」ということを問われるというのは、けっこう、経営でもそうですよね。

 

【山野】究極の。

 

【財前】ですね。もういま判断しなきゃダメ、というようなときです。

 

【山野】「トロッコ問題」みたいなことですね。

 

【財前】どちらを救うかみたいなことですね。そのときに理屈など抜きで判断しないとダメなところというのはやはりあるんです。でも、そのへんが言語化はけっこう難しいと思いますけれども、そういう部分は、何かを決断した回数やいろいろな人と会うことで影響を受けていくことで培われていくものだと思っています。

 

【山野】センスですね。

 

【財前】センスは後発的に身に付けることができるのですが、そのためにはやはりいろいろな人と会ったり、感じたり、体験したり、五感で受けとっていることが重要です。もう少し言うなら、コスパだけで考えないことです。コスパは大事なんですが、コスパだけで考えすぎないということなんです。損とか得とかだけで考えすぎると、感性は磨かれないですよね。

 

【山野】木村石鹸の木村さんもいつもそれを言いますね。

 

【財前】損か得かだけで考えてしまったら、感性というのは衰えてくるもんですよ。例えば、何か食べる時もネットで調べてから、クチコミを見て「あそこは美味しそうだし、コスパがいいから行こう」ってなりがちじゃないですか。それはもちろん構わないんだけれど、なんでもかんでもそれでやってしまうと感性は磨かれないのではないかって話です。時には何も調べないで、「うわあ、この店、すごく入りづらい。でも、とても気になる。」みたいな損得ではない、自分の感性に従ったお店に行ってみるというようなことが必要なんじゃないかと。「知識を得れば何とかなる」と思ってしまっているだけでは、解決できないことがある、という感じなんですよね。もちろん知識がないと考えることができないので、「ビジネスモデル」や「マーケティング」など、知識の幅を広げないといけません。でも、今は過去の経験や知識も通用しなくなってきています。いろいろなビジネス形態を知ることは大事なんですけれども、本当のところは、「これ、どうしたら良いんだ?」というような経験したことがないこと、持っている知識では対応できないことに遭遇した時、判断して、対応できるようになるには、知識ではない部分を培っていることが、これからますます大事なのではないかと思っています。

 

【山野】本当にそのとおりだと思います。そういった経験をしているアトツギの方もたくさんいるし、本当に多様な人たちがいるので、もっともっと会いにいけばいいのにと思っています。でも普通は、なかなか会いにいきたくても行けないですよね。今も色々と取り組みをされていますが、そのあたりを社団として、うまく設定して、繋いであげることが必要だと思います。

 

【財前】そうですねー。今は、知識はいくらでも調べられると思うんですよ。新規事業の方法やアイディアの出し方など、そういうのはいくらでもあるんです。だから、そんなことは本質的な問題ではないと思っています。すみません、ちょっと長くなりました。

 

【山野】ためになる話ばかりでした。今日はありがとうございました!

 

 

2019年の新規事業開発講座での写真

【スピーカー】

■財前 英司

関西大学梅田キャンパス
スタートアップ支援マネージャー

学校法人関西大学から出資を受けて、調達システムの構築、調達代行、販売を中心とした事業会社を設立し、成長させた経験を元に関西大学梅田キャンパスの事業構想から立ち上げを行う。現在は起業文化醸成、裾野の拡大をめざし、関西大学が運営するSTARTUP CAFE OSAKAのチーフコーディネーターとして、年間300回以上のイベントの企画、プロデュースをしつつ、年間200件を超える様々な起業相談に対応。一般社団法人ベンチャー型事業承継の顧問も務める。

 

山野 千枝

一般社団法人ベンチャー型事業承継 代表理事

公益財団法人大阪産業局座 広報担当フェロー

1969年生まれ、岡山県出身。専門はファミリービジネスの事業承継、広報ブランディング。関西学院大学卒業後、ベンチャー企業、コンサルティング会社を経て、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」の創業メンバーとして2000年より参画。ビジネス情報誌「Bplatz」の編集長として多くの経営者取材に携わる中、ファミリービジネスの経済合理性に着目し、同族企業の承継予定者に特化した新規事業開発を支援する「一般社団法人ベンチャー型事業承継」を設立、代表理事に就任する。オンラインサロン「アトツギU34」主宰。社史制作や企業のブランディングを手がける株式会社千年治商店 代表取締役。関西大学「アトツギベンチャーゼミ」非常勤講師。マイクロ波化学広報顧問。大阪市立大学学長特別顧問。日本経済新聞「日経ウーマンオブザイヤー2020」受賞。

 

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